日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
セッションID: PIV-34
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ポスター発表 IV
看護師による入院患者へのロービジョンケアが有用であった一例
*前川 亜樹海老澤 美奈山本 洋子尾形 真樹新井 千賀子平形 明人
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抄録
【背景】一般的にロービジョン患者は、視機能低下に起因した身体的・社会的・経済的側面への精神的不安が強い。今回、入院時から常に患者と接する立場である看護師が、ロービジョンケアの観点を取り入れた看護を進めることで、患者の自立促進や不安の解消、精神的安定に有用であった一例を経験したので報告する。 【症例】55歳男性。糖尿病にてインスリン療法中。両眼)増殖糖尿病網膜症、右眼)陳旧性網膜剥離、左眼)裂孔併発牽引性網膜剥離の診断を受け東北地方から紹介受診。難治例の病態であったが、可能性のある左眼手術目的で入院した。入院時視力:右眼光覚弁、左眼0.03。入院時より視機能低下、家族と離れていること、就業できないなどに起因する苛立ちを看護師に表出し、手術に対しては中止したいなどの言動が見られた。手術前、内科医師の指示でインスリンをノボリンからイノレットに変更し注射方法の指導を実施。入院後3日目に左眼硝子体手術施行。手術翌日、網膜は復位したが、シリコンオイルと術後炎症下で術前より視機能の低下を自覚、視機能喪失への不安が増大した。その状態でも自立度の保持、意欲の低下が起こらないように、患者と相談して身のまわり物品の置き場所を決める、音声時計の貸出、点眼器・点眼表を用いた点眼指導、点眼瓶が触覚で分かるように判別方法の指導、自己血糖測定・インスリン注射の手技確認などを実施。手術後4日目にロービジョンスタッフが介入し社会資源の紹介や矯正眼鏡の作成を行い、看護師が病棟外への単独歩行補助を実施。その後、患者一人の行動範囲拡大、看護師に対しての言葉も柔らかくなり、精神的に落ち着いた様子が見られるようになった。手術後9日目、左眼視力0.03と変化はないが網膜復位により視野の拡大あり、白杖を使用して退院した。術後2ヶ月目の外来では東北から通院、左眼視力0.09で活動範囲の低下はない様子であった。 【結論】重篤な視機能低下を合併する難治な病態のロービジョン患者に対し、看護師は患者のQOLを出来るだけ低下させずに退院後の生活自立に繋がる看護が重要である。常に患者と接する立場である看護師がロービジョンケアの観点から看護にあたることは視機能障害の個々への対応を具体的に解決し、漠然とした不安に対応するために意義があると考えられた。
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© 2006 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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