2019 年 40 巻 1 号 p. 93-103
5-アミノレブリン酸(ALA)の代謝産物であるプロトポルフィリンIX(PPIX)は正常組織に比べ腫瘍組織に高濃度に集積し,青色光で赤色の蛍光を発する.この特性を利用した癌の蛍光診断を光力学診断(Photodynamic Diagnosis: PDD)と呼ぶ.膀胱癌においては,5-ALA投与後の腫瘍の発光程度と悪性度に相関関係があることや,5-ALA投与後の尿中ポルフィリン値がその診断に有用であると報告されている.しかし,腎細胞癌においては,そのような研究報告はない.本研究においては,腎細胞癌における5-ALAの診断に関する有用性について検討したので報告する.
5-アミノレブリン酸(5-ALA)は,蛍光物質であるプロトポルフィリンIX(PPIX: ピーピーナインと読まれる)の合成に必須のアミノ酸である1)(第45回尿路悪性腫瘍研究会の講演スライドも参照2)).生体内(ミトコンドリア内)で合成される2つの5-ALA分子は,細胞質内において,ピロール環をもつポルフォビリノーゲンとなる.4つのポルフォビリノーゲンは直列に連結後,酵素(ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼ)の働きにより環状構造を形成してウロポルフィリノーゲンIII(Uro III)となる.Uro IIIは酵素(ウロポルフィリノーゲンIII脱カルボキシ酵素)の働きによりコプロポルフィリノーゲンIII(Copro III)となり,ミトコンドリア内に移行してPPIXとなる.PPIXに鉄付加酵素が働くとPPIXのポルフィリン環の中心に鉄分子が配位してヘムとなる.これらの一連の合成では(ヘム合成経路),それぞれの合成に特異的な酵素(ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼやウロポルフィリノーゲンIII脱カルボキシ酵素はそれらの一部)が働く.ポルフォビリノーゲンは,ウロポルフィリノーゲンIIIシンターゼが働かずに環状構造を形成するとウロポルフィリノーゲンI(Uro I)となる.Uro IへはUro IIIへと同様にウロポルフィリノーゲンIII脱カルボキシ酵素が働きコプロポルフィブリノーゲン I(Copro I)となるが,Copro IはPPIXやヘムに変換されない(非活性型ポルフィリン).Uro I,Uro III,Copro I,およびCopro IIIは水溶性ポルフィリンであり尿中に排泄される一方,PPIXは尿中に排泄されない.5-ALAを用いた光力学診断の理解には,上述したヘム合成経路の理解が必要である.
PPIXは正常細胞と比べ癌細胞に高濃度に集積することが多いが,この性質を利用して青色光照射により癌組織を周囲の正常組織より強く発光させる光力学診断が行われる3,4).PPIXが癌細胞に高濃度である一つの理由として,癌細胞における鉄付加酵素の発現が正常と比較して少ないことがあげられる5).泌尿器科領域では,平成29年12月より,「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)時における筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle-invasive bladder cancer: NMIBC)の可視化」を効能・効果として,アミノレブリン酸塩酸塩(アラグリオ®顆粒剤:ALA)が実臨床において使用可能となり,今後はALAを用いたPDD併用下TUR-BT(PDD-TUR)により術後の癌再発率が低下することが見込まれる.さらに,膀胱癌においては,光力学診断における発光程度と腫瘍の悪性度が相関することや,5-ALA投与後の尿中に排泄されるポルフィリンの測定が癌検出に有用であると報告されており6,7),TUR-BT時の微小腫瘍細胞の検出以外での用途に関しても検討されている.
腎細胞癌においては,手術中の切除断端同定のためにPDDを併用した報告があるが8),腎細胞癌の組織型や異型度と発光強度との関連性や,腎細胞癌の有無と5-ALA投与後の尿中ポルフィリン濃度との関連性を検討した研究報告はない.本研究は,これらの関連性を明らかにすることを目的として行った.
本研究では,2つのCohort(Cohort 1とCohort 2)において,5-アミノレブリン酸塩酸塩(SBIファーマ株式会社より供与)を用いた臨床研究を行った.Cohort 1ではアミノレブリン酸投与後の腎腫瘍の発光強度に関する前向き検討を行い,Cohort 2では腎摘術前後におけるアミノレブリン酸投与後の血漿および尿中のポルフィリン代謝産物に関する前向き検討を行った.埼玉医科大学国際医療センターの倫理委員会による承認の後に施行した(それぞれ承認番号09-031と10-020).すべての患者に研究の説明を行った後に,署名された同意書を取得した.
3.2 対象患者2009年11月11日から2011年2月9日までの約1年3カ月の間に,腎細胞癌あるいはその疑いにて開腹根治的腎摘除術,腹腔鏡下根治的腎摘除術,あるいは開腹腎部分切除を施行した83例(Cohort 1:52例,Cohort 2:31例)を対象とした.すべての症例において,埼玉医科大学国際医療センター泌尿器腫瘍科における固有の個人識別符号(Saitama medical university International Medical Center - Uro-oncology number: SIMC-Uro#)を付与し,データーベースの管理を行った(Supplemental Table 1).各症例の臨床情報(Supplemental Table 1参照)を診療記録から後方視的に抽出した.
3.3 腎癌患者への5-ALA投与およびそれによる発光効果(Cohort 1)や代謝物の解析(Cohort 2)Cohort 1において,患者は手術開始2時間前にそれぞれ30 mg/kgの5-アミノレブリン酸塩酸塩(製品品番AL-05-1®,コスモ・バイオ株式会社)を5%グルコース溶液50 ccに溶解したものを服用した.Cohort 1の解析では,2名の泌尿器科医(小山政史と上野宗久)が摘出した腎腫瘍を切り開き(術中には発光を確認しなかった),暗室にて青色光(光源装置:D-LIGHT C,KARL STORZ;カラービデオカメラシステム:Endovision TRICAM SL II,KARL STORZ)を照射して,腫瘍における赤色発光の程度を,0:発光無し,1:弱発光,2:中程度発光,3:強発光のいずれかに段階的評価を行った(Supplemental Table 1内の“luminescence intensity”).その際,肉眼的に壊死組織と考えられる部位は判定の対象外とした.発光程度が2と3の中間的程度と判断される場合には2.5と判定した.
Cohort 2の解析では,手術前日に患者に5-アミノレブリン酸塩酸塩カプセル(100 mgの5-ALAを含有,製品番号No. 120730C)を3カプセル(合計300 mg)を服用させ,その服用直前の血漿(P1)と尿(U1)および4–6時間後の血漿(P2)と尿(U2)を採取した.同様に,手術の約30日後にも5-アミノレブリン酸塩酸塩カプセルを3カプセル服用させ,その直前の血漿(P3)と尿(U3)および4–6時間後の血漿(P4)と尿(U4)を採取した.なお,5-ALAの内服用量は,大腸癌患者に対する光力学スクリーニングについての報告9)において100 mgより300 mgの5-ALAの方が有用性が高く,一方5-ALA 1 gでは健常人に偽陽性が出る可能性が示唆されたため6),300 mgとした.U1–4からは,Uro I(nmol),Uro III(nmol),Copro I(nmol),およびCopro III(nmol)を以前の報告と同様の方法6)で測定した.具体的には,採取された尿0.2 mlを,6.3 mMのヨウ素を含む等量の酢酸と混合し,10,000 × gで10分間遠心分離した.その後C18逆相カラム(資生堂)と高速液体クロマトグラフであるProminence(島津製作所)を用いてポルフィリンを分離した.溶出は40°C,1.0 ml/minで溶媒A(12.5%アセトニトリル(pH 5.2)を含有する1 Mの酢酸アンモニウム)を用いて5分間行った後,0–100%の溶媒B(80%のアセトニトリル(pH 5.2)を含有する50 mMの酢酸アンモニウム)を段階的に25分間行い,100%溶媒Bを用いて10分間溶出した.ポルフィリンは,蛍光分光計(404 nm励起,620 nm検出)で連続的に検出した.試料中のポルフィリン濃度は,標準ポルフィリンで得られた較正曲線から推定した.これらと同時に測定したクレアチニン濃度(creatinine g/L)により除算した(補正した)値,すなわちUro I(nmol/gCre),Uro III(nmol/gCre),Copro I(nmol/gCre),およびCopro III(nmol/gCre)を統計解析に用いた(Supplemental Table 1).Uro I(nmol/gCre),Uro III(nmol/gCre),Copro I(nmol/gCre),およびCopro III(nmol/gCre)を加算して求めた尿中ポルフィリン総量(porphyrin [total, nmol/gCre])も統計解析に用いた.血漿(P1–4)からは5-ALA(micromol/L)とPPIX(nmol/L)を以前の報告と同様に10)以下の方法で測定した.血漿中ALAは,0.2 mlの血漿を25% TCA溶液と混合し,遠心分離した.得られた上清0.01 mlを試験管に移し,0.24 mlのMilli-Q水,0.25 mlの200 mM酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH 3.8),1.25 mlの溶液A(15%アセチルアセトンおよび10%エタノールを含む68.4 mM塩化ナトリウム)および0.25 mlの溶液B(3.3%ホルムアルデヒド)を加えて,15分間沸騰水中で熱し,直ちに氷水で冷却した.この反応混合物をHPLCシステム(Inertsil ODS‑3, 5 μm, 4.6 × 150 mm; GL Sciences)により分析した.血漿中PPIXは,0.1 mlの血漿を0.01 mlの50%酢酸と0.3 mlのN,N-ジメチルホルムアミド-2-プロパノール溶液を加えて30秒間撹拌した後,遠心分離して上清を除去し,沈殿物を回収した.上記と同じ手順を繰り返して,沈殿物を0.15 mlのDMF-IPA溶液と共に抽出した.このPPIX抽出液を,Capcell Pak C18 UG120カラム(5 μm,4.6 × 150 mm,資生堂)を用いたHPLCシステムにて分析した.移動相はアセトニトリル-10 mMテトラブチルアンモニウム水酸化物溶液(pH 7.5)(流速1.0 ml/min;溶出温度40°C)を使用し,励起光400 nm,蛍光630 nmの蛍光検出器にて分析した.
3.4 臨床的因子の抽出以前の報告と同様に11),3名の著者が,術前のCTあるいはMRIの体軸断面画像の長径(a mm)と短径(b mm)および前額断面の長径(c mm)を測定した.それぞれの測定において,a,b,cのうち最も長いものを腫瘍最大径としその平均値を統計解析に用いた(Supplemental Table 1内“average maximal length of the tumor, maximum length in a–c”).また,それぞれの測定において腫瘍の推定体積を4/3 × 3.141592 × a/2 × b/2 × c/2により計測し,その平均値を統計解析に用いた(Supplemental Table 1内の“average volume(mm3)”).摘出された組織の悪性度(grade 1–3: G1–3)に関しては,組織に異なるグレードが存在する場合(たとえばG2 > G3),最も多い部位をGrade(dominant)として(G2 > G3の場合G2,Table 1-2),最も悪性度の高いものをGrade(highest)として(G2 > G3の場合G3,Table 1-2),これらの2変数を統計解析に用いた.ほかに,性別(sex),年齢(age),身長(height),体重(body weight),体格指数(body mass index),既往歴の有無(糖尿病[diabetes],高血圧[hypertension],心臓病[Cardiac disease],血液透析[Hemodialysis]),腫瘍の病期(TNM分類),転移の部位,術前後のC反応性蛋白(CRP),術前白血球数(WBC),術前白血球の好中球の割合(preoperative percentage of neutrophil),術前白血球のリンパ球の割合(preoperative percentage of lymphocyte),術前ヘモグロビン濃度(preoperative hemoglobin concentration),術前血小板数(preoperative platelet concentration),術前血清ナトリウム濃度(preoperative Na),術前血清カルシウム濃度(preoperative serum calcium concentration),術前血清アルブミン濃度(preoperative serum albumin concentration,術前血清乳酸脱水素酵素濃度(LDH),術前血清クレアチニン濃度(preoperative serum creatinine),および術前治療(presurgical therapy)の診療記録を抽出した.
3.5 統計解析統計の手法としては,臨床的および病理学的因子が分割表であらわされる変数(カテゴリー値)の場合にはピアソンのカイ二乗検定による検定を,それらが連続変数の場合には中央値の比較をマン・ホイットニーのU検定(Mann-Whitney U test)により検定した.なお,前者において,一つのカテゴリーのn数が5以下である場合には,ピアソンのカイ二乗検定の代わりにフィッシャーの直接確率検定を用いて検定した.腎腫瘍の蛍光発光強度が無(Grade 0)-弱(Grade 1)発光であった症例をweak群,中(Grade 2)-強(Grade 3,Fig.1「例:SIMC-Uro# 3859」)発光であった症例をstrong群と定義し,術後の無増悪生存期間(progression free survival)と全生存期間(overall survival)をカプランマイヤー法により推定し,それらにおけるweak群とstrong群のハザード比はCox回帰分析により行った.

Images of 5-ALA-PDD on nephrectomy specimen. A: white light, B: blue light. Scale bars, 10 mm. “RCC” and “normal” in the figure indicate the portions of renal cell carcinoma and normal kidney, respectively. This figure was modified from a figure in reference1).
Cohort 1においては,5-ALA経口投与による腎腫瘍の蛍光発光強度と臨床的因子との関連性について検討を行った.weak群とstrong群はそれぞれ全体の38.5%と61.5%であった(発光症例の1例をFig.1に示す).連続変数のweak群とstrong群との比較において,年齢(age, year),体格指数(body mass index),血清C反応性蛋白(CRP, mg/dL),白血球数(white blood cell × 103/microL),好中球数(neutrophil × 103/microL),リンパ球数(lymphocyte × 103/microL),血清ナトリウム値(serum Na, mEq/L),血清乳酸脱水素酵素(serum lactate dehydrogenase, IU/L),および血清クレアチニン値(serum creatinine, mg/dL)には有意差を認めなかった(Table 1-1内の斜字).一方,血小板数(platelet conc.; 234 [198–263] × 104/microL vs 207 [192–237] × 104/microL, p = 0.011, Mann-Whitney U test),血清アルブミン値(serum albumin; 4.2 [3.5–4.4] g/dL vs 4.0 [2.7–4.3] g/dL, p = 0.027),アルブミンにより補正された血清カルシウム値(serum calcium; 9.10 [8.70–9.58] vs 9.65 [9.2–10.18], p = 0.026),最大腫瘍径(tumor size; 36.9 [23.7–68.8] mm vs 62.0 [47.5–90.6] mm, p = 0.006),および腫瘍体積(tumor volume; 21,896.3 [5,155.9–117,258.8] mm3 vs 99,110.6 [39,140.9–253,661.3] mm3, p = 0.008)に有意差を認めた(Table 1-1内の太字).
| total (n = 52) | weak (Grade 0–1, n = 20) | strong (Grade 2–3, n = 32) | p value | |
|---|---|---|---|---|
| age (yr) | 65 (55–70) | 65 (50–69) | 66 (56–71) | 0.351 |
| Body mass index (kg/m2) | 22.3 (20.4–26.4) | 22.5 (20.4–26.3) | 22.2 (20.0–26.5) | 0.821 |
| CRP (mg/dL) | 1.13 (0.16–5.20) | 0.35* (0.10–2.80) | 2.1** (0.17–8.90) | 0.113 |
| white blood cell (×103/microL) | 6.17 (4.83–7.38) | 5.83 (4.59–6.78) | 6.31 (5.00–8.47) | 0.301 |
| neutrophil conc. (×103/microL) | 3.90 (2.93–5.31) | 3.77 (2.88–4.93) | 4.01 (2.98–6.3) | 0.592 |
| lymphocyte conc. (×103/microL) | 1.41 (1.00–1,71) | 1.44 (1.12–1.77) | 1.33 (0.94–1.67) | 0.605 |
| hemoglobin conc. (g/dL) | 12.3 (11.0–13.4) | 12.7 (11.3–15.0) | 12.1 (10.5–13.1) | 0.074 |
| platelet conc. (×104/microL) | 234 (198–263) | 207 (192–237) | 246 (214–305) | 0.011 |
| serum Na (mEq/L) | 141 (140–143) | 142 (140–143) | 141 (139–143) | 0.296 |
| serum albumin (g/dL) | 4.2 (3.5–4.4) | 4.3 (4.1–4.5) | 4.0 (2.7–4.3) | 0.027 |
| serum calcium (mg/dL, corrected by serum albumin) | 9.30 (8.83–10.00) | 9.10 (8.70–9.58) | 9.65 (9.20–10.18) | 0.026 |
| serum lactate dehydrogenase (IU/L) | 186 (166–214) | 187 (166–207) | 184 (167–217) | 0.792 |
| serum creatinine (mg/dL) | 0.75 (0.61–0.90) | 0.75 (0.59–0.87) | 0.77 (0.68–0.93) | 0.232 |
| tumor size (mm) | 56.0 (32.6–80.5) | 36.9 (23.7–68.8) | 62.0 (47.5–90.6) | 0.006 |
| tumor volume (mm2) | 65,571.7 (14,922.2–175,377.3) | 21,896.3 (5,155.9–117,258.8) | 99,110.6 (39,140.9–253,661.3) | 0.008 |
* and **: CRP was not preoperatively measured in 4 and 5 cases, respectively. Bold characters indicate values that significantly different between weak and strong intensity groups.
次に質的変数(カテゴリー変数)における解析では,2群間に性別(sex, Table 1-2),高血圧(hypertension)の有無,心疾患(cardiac disease)の有無,血液透析(hemodialysis)の有無,臨床病期(clinical TNM)(画像所見),肺・肝・骨・脳・リンパ節転移の有無(画像所見),pathological T(病理所見),microscopic venous infiltrationの有無(病理所見),microscopic lymphatic infiltrationの有無(病理所見),病理組織型の種類(病理所見),肉腫様変化(sarcomatoid component in the tumor)の有無(病理所見),腫瘍壊死(necrosis)の有無(病理所見),および術前抗がん剤治療(neoadjuvant/presurgical treatment)の有無において有意差を認めなかった. なお,興味深い点として,chromophobe RCCと診断された3症例ではいずれも5-ALAによる腫瘍の発光は認められなかった(Grade 0; SIMC-Uro# 2338, 3352および3515, Supplemental Table 1).一方で,糖尿病の有無(weak vs strong = 5.0% vs 34.4%, p = 0.018, Fisher’s exact test),higher grade of the tumor(weak vs strong = [grade 1 vs grade 2 vs grade 3 = 20.0% vs 70.0% vs 5.0%] vs [0.0% vs 59.4% vs 34.4%],p = 0.010,ピアソンのカイ二乗検定),およびdominant grade of the tumor(weak vs strong = [50.0% vs 45.0% vs 0.0%] vs [12.5% vs 56.3% vs 25.0%],p = 0.008,ピアソンのカイ二乗検定)では有意差を認めた(Tabel 1-2,太字).
| total (n = 52) | weak (Grade 0–1, n = 20) | strong (Grade 2–3, n = 32) | p value | ||
|---|---|---|---|---|---|
| sex | female | 20 (38.5) | 8 (40.0) | 12 (37.5) | 0.857 |
| male | 32 (61.5) | 12 (60.0) | 20 (62.5) | ||
| diabetes mellitus | yes | 12 (23.1) | 1 (5.0) | 11 (34.4) | 0.018* |
| no | 40 (76.9) | 19 (95.0) | 21 (65.6) | ||
| hypertension | yes | 22 (42.3) | 9 (45.0) | 13 (40.6) | 0.756 |
| no | 30 (57.7) | 11 (55.0) | 19 (59.4) | ||
| cardiac disease | yes | 6 (11.5) | 2 (10.0) | 4 (12.5) | 1.000* |
| no | 46 (88.5) | 18 (90.0) | 28 (87.5) | ||
| hemodialysis | yes | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | NA |
| no | 51 (98.1) | 20 (100.0) | 31 (96.9) | ||
| clinical T stage | T1a and T1b | 35 (67.3) | 15 (75.0) | 20 (62.5) | 0.432 |
| T2a and T2b | 8 (15.4) | 4 (20.0) | 4 (12.5) | ||
| T3a, T3b, and T3c | 6 (11.5) | 1 (5.0) | 5 (15.6) | ||
| T4 | 2 (3.8) | 0 (0.0) | 2 (6.3) | ||
| unknown | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| clinical N stage | N0 | 46 (88.5) | 19 (95.0) | 27 (84.4) | 0.472 |
| N1 | 5 (9.6) | 1 (5.0) | 4 (12.5) | ||
| unknown | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| clinical M stage | M0 | 46 (88.5) | 20 (100.0) | 26 (81.3) | 0.120 |
| M1 | 5 (9.6) | 0 (0.0) | 5 (15.6) | ||
| unknown | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| lung metastasis | yes | 3 (5.8) | 0 (0.0) | 3 (9.4) | 0.276* |
| no | 49 (94.2) | 20 (100.0) | 29 (90.6) | ||
| liver metastasis | yes | 0 (0.0) | 0 (0.0) | 0 (0.0) | n/a |
| no | 52 (100.0) | 20 (100.0) | 32 (100.0) | ||
| bone metastasis | yes | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | 1.000* |
| no | 51 (98.1) | 20 (100.0) | 31 (96.9) | ||
| brain metastasis | yes | 0 (0.0) | 0 (0.0) | 0 (0.0) | n/a |
| no | 52 (100.0) | 20 (100.0) | 32 (100.0) | ||
| lymph node | yes | 5 (9.6) | 1 (5.0) | 4 (12.5) | 0.637* |
| no | 47 (90.4) | 19 (95.0) | 28 (87.5) | ||
| pathological T stage | 1 | 33 (63.5) | 15 (75.0) | 18 (56.3) | 0.568 |
| 2 | 8 (15.4) | 3 (15.0) | 5 (15.6) | ||
| 3 | 9 (17.3) | 2 (10.0) | 7 (21.9) | ||
| 4 | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| unknown | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| microscopic venous infiltration | yes | 11 (21.2) | 3 (15.0) | 8 (25.0) | 0.213 |
| no | 41 (78.8) | 17 (85.0) | 24 (75.0) | ||
| microscopic lymphatic infiltration | yes | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | 0.178 |
| no | 51 (98.1) | 20 (100.0) | 31 (96.9) | ||
| histology of the tumor | clear cell | 45 (86.5) | 16 (80.0) | 29 (90.6) | 0.176 |
| chromophobe | 3 (5.8) | 3 (15.0) | 0 (0.0) | ||
| papillary | 2 (3.8) | 1 (5.0) | 1 (3.1) | ||
| spindle | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| non-RCC | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| Sarcomatoid component in the tumor | no | 50 (96.2) | 20 (100.0) | 30 (93.8) | 0.522 |
| yes | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| unknown | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | ||
| Surgical margin | negative | 45 (86.5) | 18 (90.0) | 27 (84.4) | 0.342 |
| positive | 3 (5.8) | 0 (0.0) | 3 (9.4) | ||
| unknown | 4 (7.7) | 2 (10.0) | 2 (6.3) | ||
| higher grade of the tumor | 1 | 4 (7.7) | 4 (20.0) | 0 (0.0) | 0.010 |
| 2 | 33 (63.5) | 14 (70.0) | 19 (59.4) | ||
| 3 | 12 (23.1) | 1 (5.0) | 11 (34.4) | ||
| unknown | 3 (5.8) | 1 (5.0) | 2 (6.3) | ||
| dominant grade of the tumor | 1 | 14 (26.9) | 10 (50.0) | 4 (12.5) | 0.008 |
| 2 | 27 (51.9) | 9 (45.0) | 18 (56.3) | ||
| 3 | 8 (15.4) | 0 (0.0) | 8 (25.0) | ||
| unknown | 3 (5.8) | 1 (5.0) | 2 (6.3) | ||
| necrosis | no | 33 (63.5) | 16 (80.0) | 17 (53.1) | 0.099 |
| yes | 17 (32.7) | 3 (15.0) | 14 (43.8) | ||
| unknown | 2 (3.8) | 1 (5.0) | 1 (3.1) | ||
| neoadjuvant/presurgical treatment | yes | 1 (1.9) | 0 (0.0) | 1 (3.1) | NA* |
| no | 51 (98.1) | 20 (100.0) | 31 (96.9) |
P values were calculated by Pearson’s chi-square test except for p values marked by “*” which were analyzed by Fisher’s exact test.
以下の5例では,同一腫瘍内で発光強度の異なる部位が混在していたため,それぞれの部位において別々にヘマトキシリン・エオジン染色を行い,1名の病理医(安田政実)がそれらに特徴的な部位を6枚ずつ画像として獲得した(Fig.2;それぞれの症例において,strong,weak共に2,4,および6は,1,3,および5それぞれの特徴的な部分の高倍率像であり,それぞれ図中に矢印で示した). Case 1では,発光が強い(Fig.2のstrong)部分で(ブロック#14)は,壊死,出血,炎症細胞浸潤をともなう癌を認めた一方,発光の弱い部分(Fig.2のweak,ブロック#15)では壊死が認められなかった.ブロック#14と#15の間に,癌細胞の異型度の違いはみられなかったが,ブロック#14の方が大型の異型細胞が多かった.Case 38ではstrong部位では出血や壊死が目立ち,腫瘍細胞は異型性が強く,bizarreな核を有するものや多核化したものが多数観察された一方(G2 = G3),weak部位では比較的均一な腫瘍細胞よりなる充実胞巣状の癌が認められた(G2 > G1).Case 41では,strong部位ではそれに比べて出血・壊死が目立ち,腫瘍細胞は異型性が強く,bizarreな核を有するものや多核化したものが多数観察され一方,weak部位では比較的均一な腫瘍細胞よりなる充実胞巣状のclear cell carcinoma(G2)が認められた.Case 42では,strong部位(ブロック#8)は,weak部位(ブロック#9)と比較すると出血や壊死が顕著であり,腫瘍細胞の異型性はstrong部位のほうがweak部位と比較し少しだけ高かった.Case 49では,strong部位(ブロック#1)とweak部位(ブロック#2)は,どちらも異型度がG1であり,大きな組織学的差異はなかった.以上のように,少数の症例における解析であるため統計学的な検討は行えなかったが,strong部位はweak部位と比較し,壊死や出血を伴うことが多く,異型度が高い可能性が高いことが示唆された.

Six characteristic parts of hematoxylin and eosin staining for the sites of different color development in the same tumor (strong 1–6, weak 1–6) in 5 cases (Case 1, 38, 41, 42, 49). In each case, 2, 4, and 6 are the high magnification of each characteristic part of 1, 3, and 5 (shown with arrows) for both strong and weak, respectively.
5-ALAによる発光程度と予後に関する検討では,weak群の5年無増悪生存率(progression free survival)は89.7%であった一方,strong群のそれは67.7%であり,発光強度が強いほど有意に予後が不良であった(ハザード比2.027[95%信頼区間:0.945–4.350],p = 0.049,単変量Cox回帰分析,Fig.3A).同様に,weak群の術後5年目における全生存率は91.7%であった一方,strong群のそれは78.7%であり,発光強度が強いほど予後が不良である傾向を認めた(ハザード比2.368[95%信頼区間:0.826–6.789],p = 0.109,単変量Cox回帰分析,Fig.3B).

The study on the correlation between intensity of luminescence by 5-ALA and prognosis. A: The 5-year progression free survival of the weak group (blue line) and that of the strong group (red line). B: The overall survival of the weak group (blue line) and that in the strong group (red line).
Cohort 1の解析結果より,5-ALAは悪性度の高い腎腫瘍に多く取り込まれて,あるいは悪性度の高い腎腫瘍では発光物質であるプロトポルフィリンIXにより代謝されて,強い発光強度を示したことが推測される.Cohort 2として31例が登録されており,病理学的病型の内訳はchromophobe RCC1例,clear cell RCC 26例,oncocytoma 1例,およびpapillary RCC 3例(1例は2型)であった.症例数の最も多いclear cell RCC 26例の統計学的解析を行った.
術前5-ALA投与前,術前かつ5-ALA投与後,術後かつ5-ALA投与前,および術後かつ5-ALA投与後の4回の尿中ポルフィリン測定を通じて,濃度の中央値はCopro III > Copro I > Uro I > Uro IIIの順に多かった(Fig.4A).Uro Iの解析において,術前Uro I排泄量(13.59 ± 8.47 nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(33.14 ± 9.10 nmol/gCre, p ≤ 0.001, paired t-test, Fig.4B内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “before surgery”).同様に,術後Uro I排泄量(17.84 ± 15.23 nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(39.84 ± 22.2 nmol/gCre, p ≤ 0.001, paired t-test, Fig.4B内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “after surgery”).しかし,5-ALA投与後のUro I排泄量は,術前と術後で有意差を認めなかった(p = 0.124, paired t-test, Fig.4B内の“before surgery” vs “after surgery” in “after 5-ALA”).Uro IIIの解析において,術前Uro III排泄量(0.000 [0.000–1.969] nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(12.28 [9.14–18.69] nmol/gCre, p ≤ 0.001, Wilcoxon signed rank test, Fig.4C内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “before surgery”).同様に,術後Uro III排泄量(0.00 [0.00–0.00] nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(4.08 [0.00–13.74] nmol/gCre, p ≤ 0.001, Wilcoxon signed rank test, Fig.4C内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “after surgery”).5-ALA投与後のUro III排泄量は,術前(平均値 ± 標準偏差 = 14.60 ± 10.751 nmol/gCre)より術後(9.70 ± 15.42 nmol/gCre)が有意に少なかった(p = 0.0482, paired t-test, Fig.4C内の“before surgery” vs “after surgery” in “after 5-ALA”).Copro Iの解析において,術前Copro I排泄量(37.29 [25.99–47.13] nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(87.98 [64.47–110.72] nmol/gCre, p ≤ 0.001, Wilcoxon signed rank test, Fig.4D内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “before surgery”).同様に,術後Copro I排泄量(27.76 [16.12–44.08] nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(75.34 [50.83–93.13] nmol/gCre, p ≤ 0.001, Wilcoxon signed rank test, Fig.4D内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “after surgery”).5-ALA投与後のCopro I排泄量は,術前(99.77 ± 64.78nmol/gCre)より術後(81.25 ± 46.16 nmol/gCre)が有意に少なかった(p = 0.0129, paired t-test, Fig.4D内の“before surgery” vs “after surgery” in “after 5-ALA”).Copro IIIの解析において,術前Copro III排泄量(93.22 ± 35.57 nmol/gCre)は5-ALAの投与により著明に増加した(1697.58 ± 664.83 nmol/gCre, p ≤ 0.001, paired t-test, Fig.4E内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “before surgery”).同様に,術後Copro III排泄量(74.55 ± 37.49 nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(1472.49 ± 562.96 nmol/gCre, p ≤ 0.001, paired t-test, Fig.4E内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “after surgery”).しかし,5-ALA投与後のCopro III排泄量は,術前と術後で有意差を認めなかった(p = 0.086, paired t-test, Fig.4E内の“before surgery” vs “after surgery” in “after 5-ALA”).尿中総ポルフィリン排泄量の解析において,術前排泄量(154.25 ± 65.236 nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(1845.09 ± 691.19 nmol/gCre, p ≤ 0.001, paired t-test, Fig.4F内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “before surgery”).同様に,術後尿中ポルフィリン排泄量排泄量(126.13 ± 55.28 nmol/gCre)は5-ALAの投与により有意に増加した(1603.28 ± 581.46 nmol/gCre, p ≤ 0.001, paired t-test, Fig.4F内の“before 5-ALA” vs “after 5-ALA” in “after surgery”).しかし,5-ALA投与後の尿中ポルフィリン排泄量排泄量は,術前と術後で有意差を認めなかった(p = 0.0734, paired t-test, Fig.4F内の“before surgery” vs “after surgery” in “after 5-ALA”).血漿ALAおよびPPIX濃度は,術前,術後ともに5-ALA内服により上昇したが,5-ALA内服後のPPIX/ALAは,術前(15.03 ± 35.93)と術後(12.60 ± 30.35)で有意な変動を認めなかった(p = 0.4908, paired t-test).

Box-plot showing the concentration of all porphyrins (A), uroporphyrinogen I (B), uroporphyrinogen III (C), coproporphyrinogen I (D), coproporphyrinogen III (E) and total porphyrin (F) in urine before or after 5-ALA administration and surgery. The full line within each box represents median values. Also shown are 10, 25, 75 and 90 percentiles of the variables. Dots represents the values more than 90 percentile and less than 10 percentile.*p < 0.05 by Wilcoxon signed rank test or paired t-test. C1; coproporphyrin I, C3; coproporphyrin III, U1; uroporphyrin I, U3; uroporphyrin III.
以上より,尿中ポルフィリンのうち,特に5-ALA投与後のUro IIIとCopro Iが術前の腎臓癌の予測に有用である可能性が示唆された.
本研究では,Cohort 1とCohort 2を用いて2つの研究を行い,以下の知見を得た.(i)5-ALA経口投与による腎腫瘍の蛍光発光強度が高い症例では,血小板数,アルブミンにより補正された血清カルシウム値,最大腫瘍径および腫瘍体積が増加しており,血清アルブミン値が減少していた.また蛍光発光強度が高い症例の摘出検体の病理組織学的悪性度は高く,予後も悪いことが指摘された.病理組織学的悪性度に関しては,同一症例における発光程度の違う部位の検討でも矛盾の無い結果であった.(ii)嫌色素性腎細胞癌では5-ALAによる発光は認められなかった.(iii)Cohort 2においては,5-ALA投与後のUro IIIとCopro Iが腎癌のマーカーとして有用であることが示唆された.これらの結果について以下に文献的考察を行った.
膀胱癌においてALAの合成産物であるPPIXの蓄積は腫瘍の悪性度と相関することが報告されている7).Cohort 1の結果より,腎癌においても5-ALAは悪性度の高い腎腫瘍に多く取り込まれて強い発光強度を示したことが推測される.また,5-ALA経口投与による腎腫瘍の蛍光発光強度が高い症例で有意に上昇した血小板数及びアルブミンにより補正された血清カルシウム値は,International Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium(IMDC)リスク分類における予後予測因子にも使用されている項目であり12),発光強度と予後の関連を支持するものであると考えられる.すなわち,5-ALA経口投与によるPDDは,他癌腫で報告されている切除断端における癌検出のみならず,切除標本の発光強度が予後予測因子として有用である可能性が示唆された.
次に,嫌色素性腎細胞癌では5-ALAによる発光は認められなかった点について考察を加える.嫌色素性腎細胞癌は形態学的に異常なミトコンドリアの蓄積により病理学的に特徴づけられる腎腫瘍である13).PPIXはミトコンドリア内で合成されることを考慮すると,嫌色素性腎細胞癌の細胞内で外因性のALAが代謝される経路において異常なミトコンドリア内で何らかの酵素の異常などがあり,PPIXの蓄積が起こらない可能性が考えられる.嫌色素性腎細胞癌のミトコンドリア内でのPPIXの合成異常について今後の基礎研究を含めた機序の解明が必要と思われる.
膀胱癌患者における5-ALA投与後の尿中ポルフィリン濃度は,健常人のそれと比較し有意に高かったことから,5-ALA投与後の尿中ポルフィリン濃度測定は膀胱癌の検出に有用となる可能性がある6).本研究におけるCohort 2では,5-ALA投与後に尿中ポルフィリンのうち術前後でUro IIIとCopro Iが有意に変動していることが判明した.この結果は,腎癌において,5-ALA投与後の尿中ポルフィリン濃度が腫瘍マーカーとなり得ることを示唆している.尿は簡易に採取できる液状検体であり,5-ALA投与後の尿中ポルフィリン測定が腎癌の新たなスクリーニング法となることが期待される.なお,術後に尿中Uro IIIと尿中Copro Iが上昇した症例も認められた.炎症がポルフィリン代謝に影響を与えることが報告されている14,15).これらの症例では,術後の炎症あるいは残存腫瘍量の増加に伴う炎症増悪により尿中ポルフィリンが上昇したのかもしれない.
術後に5-ALAを投与して血中や尿中の5-ALAあるいはその代謝物を測定した試みはこれまでになく,本研究においてはじめておこなわれた.本研究成果を基礎データとして,5-ALA投与後の尿中ポルフィリン濃度が術後の再発予測に有用である可能性を検討するために,術後患者に5-ALA 300 mgを投与しそれらの患者における尿中ポルフィリン濃度を定期的に測定する臨床研究を計画している.
以上,本研究では,腎癌において,ALA内服によるPDDが予後予測,組織診断の補助に有用であり,さらにALA投与後の尿中ポルフィリンは腎癌のバイオマーカーとなり得ることが示唆された.今後,PDDの腎細胞癌への臨床応用にさらなる治験の蓄積が望まれる.
本研究における試薬は,SBIファーマ株式会社より提供を受けた.
本研究に開示すべき利益相反なし.