抄録
4匹の雑種幼犬を用いたアルゴンレーザーおよび結節縫合による外腸骨動脈の端々吻合を行なった。各吻合に要した時間と幼犬の成長後の各吻合部の狭窄度, 合併症, 成長率, および血管壁の組織学的変化について比較検討した。アルゴンレーザーシステムは <PC, HGM Medical> に0.3mmの光ファイバー分配システムを取り付けたものを使用した。レーザー照射は電力設定0.35ワット,スポットサイズ0.066cm2, 照射条件約3秒/cmで行った。レーザー吻合に要した時間は平均9分, 結節縫合は平均15分であり, レーザー吻合に要した時間のほうが短かった。いずれも吻合終了直後の開存性に問題はなかった。5ヶ月後, 全例を屠殺し大動脈から外腸骨動脈を摘出した。標本造影ですべての吻合部位は開存しており, 動脈瘤変化などの合併症は認めなかった。吻合部位における外径の成長率はレーザー吻合群65%, 結節縫合群56%であった。組織学的検査では, レーザー吻合部位はほぼ完全に治癒しており, 筋層の欠損部位はやや広いものの内膜はきれいに修復し過形成を認めなかった。結節縫合による吻合部位は血管壁のひきつれが著明であり, 異物反応が残存し, 内膜の過形成を認めた。これらのデータからアルゴンレーザーによる血管吻合は, 特に成長過程にある血管に対する吻合では従来の結節縫合による吻合より優れていると考えられた。