昭和医学会雑誌
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表在性膀胱腫瘍に対する抗癌剤併用膀胱内注入療法の影響に関する光顕的電顕的研究
櫻井 秀樹
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1986 年 46 巻 4 号 p. 487-506

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抄録
表在性膀胱腫瘍35例に対し, CarboquoneとCytosine arabinosideの膀胱内注入療法を施行し, 著効12例, 有効13例, やや有効1例, 無効9例 (内4例はGradeが変化) であった.正常膀胱粘膜上皮, 炎症膀胱粘膜上皮, 高分化型および低分化型腫瘍細胞について光顕的電顕的に比較検討し, また注入療法前後に腫瘍組織を採取し, その変化を有効例, 無効例および増悪例に分類して光顕的電顕的に観察した.正常膀胱粘膜上皮は, 表層, 中間層, 基底層の三層に分類でき, 表層の細胞ほど核や細胞内小器官の発達が良好であった.また内腟; 面形質膜はAUMを呈する部分も見られた.炎症膀胱粘膜上皮は, 細胞自体に特に顕著な変化は無かったが, 接着装置の減少, 細胞間隙の拡大, 細胞の剥離脱落, 上皮, 粘膜下組織に炎症細胞の浸潤が見られた.膀胱腫瘍細胞では, 細胞配列の不規則化, 表面形態の多様化, SUM部分の増加, 接着装置の減少, 核細胞質比の増大, 核の不整形化, vesicles, mitochondria, Golgi装置, 核小体の減少, free ribosomesの増加, 束状tonofilamentsの増加, 基底膜構造の不明瞭化と消失, 暗細胞の出現などが見られたが, これは低分化となるほど強く見られる傾向があった.注入療法後の変化として, 有効例では, 腫瘍細胞の脱落壊死, 細胞間隙の拡大, microvilliの嚢胞化と破壊, 細胞質の淡明化と融解, 核の腫大と淡明化, 核膜の嚢状化, chromatinの減少, 核小体の消失, mitochondriaの膨化変形, Golgi装置, free ribosomesの減少, 小胞体の拡張傾向と減少, tonofilamentsの減少などが見られたが, この変化は表層程強い傾向があった.基底膜, 間質の露出, 間質に出血と炎症細胞の浸潤が見られた.無効例は径1cm以上の腫瘍が多く, 一部では有効例と同様の変化も見られたが, 大部分の, 特に深層の細胞にはほとんど変化は見られなかった.増悪例, 特にGrade IからGrade IIIに変化した症例では, 一部に腫瘍細胞の変性壊死が見られたが, 大部分の腫瘍細胞は悪性化し, 他の低分化型の浸潤性腫瘍と同様の所見を示した.抗癌剤膀胱内注入療法は, 他の抗癌剤投与法と同様に, 多剤併用療法を用いた方が効果が得られ, 従来から言われているように, 特に腫瘍径が1cm以下の高分化型腫瘍に有効な治療法であるが, 低分化型の浸潤性腫瘍の治療法としては限界があることが示唆された.
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