昭和医学会雑誌
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ストレス潰瘍の発生に対する防御機構としての胃粘膜内粘液の重要性
木根淵 光夫
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1986 年 46 巻 5 号 p. 655-662

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抄録
胃潰瘍の発生については, 古来より多くの報告がなされているが, 定説はなく種々の因子について検討されてきた.一般的にはShay等による攻撃因子, および防御因子のbalanceの乱れが潰瘍を発生させるという考え方が主流を占め, 現在でもこの考えに基づいて検討されている.なかでも, 酸分泌については, その攻撃性およびその研究の容易さから胃潰瘍の中心として考えられ, “No acid, No ulcer”とさえ言われていた.しかし臨床的には低酸の胃潰瘍も存在することから, 潰瘍の発生を一元的には考えにくいとされていた.一方防御因子としての血流についてはBurton-Opitz等によって胃壁血流を測定して以来.いくつかの報告があるが, 当教室における鈴木等は, 胃粘膜微少循環の観察によりレセルピン潰瘍においては血流の鬱血および虚血が胃粘膜表層に出血性の変化を起こすとした.しかし胃粘膜防御因子の中でも古くよりしられていながら, その構造の難しさや観察の困難のために極めて研究が遅れていた胃粘液が胃潰瘍の発生に重要な因子となっているのではないかとの考えに基づき, 勝山等1によって胃粘液中のムコ蛋白に特異的に結合すると報告されたConcanavalin A (Con A) 染色並びに, 胃粘液中の酸性ムコ多糖と結合するalcian blue (AB) との複合染色を行い, 組織化学的観察を行ったところ, 胃壁表面および腺部において明らかな粘液減少を認め, 胃粘液が潰瘍発生の重要な役割を果たしていることがわかった.一方, 電子顕微鏡的観察により, Con A陽性粘液はMucous Neck Cell中に貯蔵されており腺管腔内や壁細胞の表面も被覆していることが明らかになった.そしてストレス負荷によって, 壁細胞表面や腺管内腔の粘液が消失し酸に対して無防備となることが確認され, 潰瘍の発生が粘膜からも起こり得る事が示唆された.
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