昭和医学会雑誌
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実験的膵炎における膵線維化初期像の病理学的検討
菊池 良知
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1987 年 47 巻 2 号 p. 207-217

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抄録
当教室では膵外分泌機能亢進作用の知られているサソリ毒 (Leiurus quinquestriatius) を用いて急性膵障害からその慢性に至る経過を明らかにする目的で実験病理学的研究を行っている.著者は該毒物を家兎の腹腔内に投与し膵線維化を作製しその初期像に対して電子顕微鏡学的検索を主体とした病理学的観察を行った.初期には致死量 (3.81×10-4mg/9) の3/4量を投与したが, 抗毒素産生の為投与期間が長ずるにつれその効果的な外分泌作用が得られなくなった.そこで血中抗毒素価に対応する毒の増量係数を求め, その時期での3/4量を投与した.投与期間により14日までを短期群とし週3回隔日投与, 120日までを中期群とし週3回隔日投与, それ以上を長期群とし週2回投与を行なった.なお長期群では該毒物単独と補助的にネオスチグミン0.2mg/kg腹腔内同時投与の2系を作製した.病理組織学的には短期群では腺房細胞は膨化変性し, 間質は水腫が著明である.中期群では間質の水腫はさらに高度となり一部ではscleroedemaを呈している.これは電顕的には間質の毛細血管周囲のfibrilとして認められた.長期群では小葉内間質の線維化がみられ, 電顕的にはperiacinar spaceの拡張は殆どなく, 間質には種々の線維芽細胞様細胞が出現し, その周囲は多量の膠原線維やfibrilで満たされ, 一部では少量のアミロイド様細線維もみられる.また線維芽細胞様細胞の中には細胞質内に小脂肪滴を有するものも僅かではあるが認められる.これらは伊東細胞との関連が問題となるが, 肝における一次的線維化と同様な発生機序が存在する可能性も考えられる.しかしながら本実験では間質の著明な水腫の繰り返しからscleroedemaへと移行しさらにはそれを基盤として, 線維芽細胞様細胞が動員され線維の誘導が起こるという経路が主体と思われる.いずれにせよこの実験系では線維の発生に一連の間葉系細胞の動向が強く関与していることはほぼ間違いないものと思われる.
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