昭和医学会雑誌
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NCO-650とその代謝物のラット肝におよぼす影響―5週間連続投与による薬物代謝酵素, 脂質ならびに微細構造の変化―
坂本 浩二大槻 彰大泉 高明鈴木 誠中山 貞男
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1987 年 47 巻 6 号 p. 843-850

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抄録

P-Tert-butylphenyl trans-4-guanidinomethylcyclohexane carboxylate hydrochloride (NCO-650) とその代謝物であるp-tert-butylphenol (BP) の, 5週間連続投与におけるラット肝薬物代謝酵素, 血清および肝脂質, ならびに肝微細構造におよぼす影響を検索した.動物は7週齢SD系雄性ラットを用いた.NCO-650とBPは2.5, 12.5, 125mg/kgを1日1回5週間連続経口投与した.BP125mg/kg投与で体重増加抑制と立毛, 接触逃避反射の亢進などの一般症状の変化を認め, 20例中4例の死亡もみられた.Aminopyrine demethylase活性はBP125mg/kg投与1週後に有意な抑制を示し, NCO-650 125mg/kgでは3, 5週後に抑制傾向を認めたものの有意差はみられなかった.Cytochrome P-450とcytochromeb5はNCO-650の投与で3週後に増加を示したが, 5週後には対照とほぼ同じ値を認めた.Mitochondriaの脂質過酸化物形成はNADPHをinitiatorとして用いた場合は明らかな変化を示さず, ascorbic acidをinitiatorとした場合にNCO-650, BPともに投与3週後に増加がみられた.Microsomeにおける脂質過酸化物形成は, 被検薬物投与5週後にNADPH, ascorbic acidいずれのinitiatorを用いても抑制を認めた.肝脂質はNCO.650ならびにBP投与で明らかな変化を示さなかった.血清脂質のtotal cholesterol, phospholipids (PL) , high density lipoprotein中のcholesterolとPL, nonesterified fatty acid, triglycerideはNCO-650とBPの125mg/kg投与で低下を示した.BP 125mg/kgではtotal protein, albumin, GOTの低下がみられた.肝微細構造ではNCO-650, BPともに125mg/kg投与1, 3週後にrough endoplasmic reticulumの配列の乱れとsmooth endoplasmic reticulumの増加を認めた.BP 125mg/kgで死亡例を認めたことから, BPの毒性はNCO-650よりも強いと思われる.NCO-650とBPの連続投与における肝の薬物代謝酵素, 脂質過酸化物形成ならびに微細構造の変化は軽度であり, 単回投与でみられる酵素誘導と微細構造の変化は持続しないことが明らかとなった.これらの結果から, 連続投与によるNCO-650とBPの肝に対する作用は毒性的なものではなく, 生理的反応であることが示唆された.

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