腰椎分離症, 分離すべり症の自然経過を解明すべく初診後10年以上経過症例に対し検討を加えた.対象は, 55例で男性28例, 女性27例.初診時年齢は4~75歳 (平均40.5±15.9歳) , 経過期間は, 10~16年 (平均11.6±1.5年) , 調査時年齢は14~85歳であった.罹患椎は, 第5腰椎52例 (両側40例, 片側12例) , 第4腰椎2例 (両側1例, 片側1例) 第4, 5腰椎1例 (両側例) .初診時分離のみの症例は35例, 分離すべり症を呈していた症例は20例であった.初診時と調査時における自覚, 他覚症状及び日常生活動作について日整会腰痛治療判定基準 (以下, 日整会判定) を用い比較した.X線学的検査では, 関節突起問分離部の形態的分類およびその推移, 椎間板高の変化, すべり度の判定およびその推移, 罹患椎の不安定性の有無につき検討をくわえた.結果: 臨床症状は日整会判定で初診時平均24.7±2.3点であった臨床症状が調査時平均27.1±2.8点となっており55症例中51症例に改善または不変が認められ, 悪化例は4例 (調査時点数14, 17, 24, 25) のみであった.全体として自覚症状で平均1.0点, 他覚症状平均-0.05点, 日常生活動作では平均1.8点の改善度であり, 日常生活動作の改善が調査時における改善傾向に貢献していた.初診時および調査時に膀胱直腸障害を認めた症例はなかった.X線学的変化では, 初診時亀裂型を呈していた8症例中6例が偽関節型に移行していたが罹患部に癒合の認められた症例はなかった, 初診時分離すべり症を呈していた症例中すべり度が増大した症例は14例であり, 不変2例, 減少4例であった.一方, 新たなすべりの発生を5症例に認めた.椎間板高に関しては調査時, 全体として減少傾向にあった分離症, 分離すべり症との間に特別な関係は見いだせなかった.不安定性が判明した症例は10症例であった.臨床症状とX線学的変化の関係では特別な相関を示したものは認められなかった.以上より, 分離症に関しては, 従来通り保存的療法で経過をみるべきであり, 分離すべり症に関しても, 予防的手術は必要ないものと思われた.