昭和医学会雑誌
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実験的虚血性筋疾患
―筋紡錘の病変について―
佐藤 温真木 寿之鈴木 義夫塩田 純一武内 透杉田 幸二郎
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1988 年 48 巻 3 号 p. 375-381

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抄録

閉塞性血管障害時の筋病理を検討する目的で, 実験的虚血筋を作成, 組織化学的に筋紡錘変化を観察した.対象は雄ネコ9匹の下腿筋.正常対照は4匹.方法は腹部大動脈, 右総腸骨動脈, 右大腿動脈の計3か所を同時に結紮し, 虚血筋を作成.8時間後に結紮を解放, 3日後に屠殺した.ただちに, 右前脛骨筋を摘出し中枢側から4個のブロックに分け, おのおのを液体窒素で凍結クリオスタットで各ブロックの中枢側から薄切を開始し, 顕微鏡下に, 筋紡錘の出現を確認し, その中枢側極部から赤道部, さらに末稍側極部までの標本を作成し, 組織化学的に検索した.結果: 1) 正常対照の筋紡錘; 各ブロックの筋紡錘の平均個数は中枢側より, おのおの4.5, 4.8, 6.3, 3.5個であり, 筋の横断面では, 筋の縦軸に並行して走る前脛骨動脈とその分枝動脈の近傍に筋紡錘は多く, 辺縁部では少なかった.個々の筋紡錘の直径は赤道部では平均100~180μm.カプセル厚は3~7μm.錘内筋はbag fiber2本, chain fiber4~6本で構成され, 赤道部では, NADH-TR, ATP ase (pH4.6) 活性はともに弱く, 傍赤道部から極部では, NADH-TR, ATP ase活性の相違により, bag 1, bag 2 fiberおよびchain fiberに区別できた.2) 筋紡錘の虚血性変化; 筋紡錘周囲の錘外筋に病変の認められない筋紡錘では, すべて錘内筋には変化が認められなかった.錘外筋の障害度が軽度な群では, 錘外筋は選択的にタイプ1線維のNADH-TR活性が低下したが, 錘内筋のNADH-TR活性は良好に保たれた.中等~高度障害群では錘外筋, 錘内筋ともに, NADH-TR, ATP ase活性がともに低下していた.錘内筋の部位 (極部, 傍赤道部, 赤道部) による障害度には, その差は認められなかった.結論: 筋紡錘に対する虚血性変化を検討すると, 錘外筋病変が軽度な群では錘内筋障害度は予想されるよりも軽微であり, 錘外筋と錘内筋の病変障害程度に差が認められた.錘外筋の病変が中等~高度な群では錘内筋は並行して障害された.

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