昭和医学会雑誌
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Oxygenated Crystalloid Cardioplegia液の心筋保護効果
井上 恒一横川 秀男久米 誠人賀嶋 俊隆森保 幸治成沢 隆山田 真高場 利博
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1991 年 51 巻 1 号 p. 1-5

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抄録
心臓手術時の補助手段として心筋保護法が積極的に研究され手術成績を著明に改善した.局所冷却法とcardioplegia法の導入によるところが大きい.本邦ではcrystalloid cardioplegia液が普及しているが内容, 組成については施設によりさまざまである.そのなかでも近年, 比較的広く使用されるSt.Thomas' Hospital solutionを酸素化すべきかどうかの議論が多い.そこで本研究ではラット摘出灌流心を用いてoxygenated St. Thomas' Hospital solutionの心筋保護効果について検討した.常温37℃の心筋温で大動脈遮断しischemiaとした実験において, cardioplegiaを行わなかった群は遮断解除後に大動脈拍出量の回復が得られなかったがoxygenated crystalloid cardioplegia (OCP) を行った群の回復は比較的良好であった.これは心筋温を21℃にした実験ではさらに明確であった.大動脈遮断中の心筋代謝を抑制する目的で心筋温を4℃まで冷却した実験でもOCPを行った群は非酸素化cardioplegia群より有意 (P<0.01) に回復率が高かった.Oxygenated St. Thomas' Hospital solutionは常温ischemiaにおいても心筋保護効果が認められた.局所冷却によって心筋温を低温にしても酸素を供給することは心筋保護上有利でありSt.Thomas' Hospital solutionを酸素化することは有用と考えられた.
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