抄録
肺癌診断技術の進歩とともに治療成績も向上しつつあるが, 今回, 肺癌の診断あるいは治療開始が遅延した症例の中から, いわゆる“Doctor's delay”とも言うべき症例を提示した.これらは胸部X線像で「二次変化像」「腫瘤陰影」などがみられたが, 決して早期発見とは言いがたい症例であった.当科で入院治療を行った肺癌186例のうち, 過去に撮影した胸部X線像の見直し読影が可能であった症例の60%に, 検診での見逃しや異常陰影の指摘困難例などが存在した.胸部X線像は様々な疾患で撮影されながらその読影が軽視されがちであり, また年1回の検診のみでは早期発見し得ない肺癌症例も存在することを十分認識する必要があると考えられた.