昭和医学会雑誌
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乳腺粘液癌における生物学的悪性度の検討
―特に増殖細胞核抗原 (PCNA) の染色性について―
菊地 浩彰諸星 利男国村 利明神田 実喜男櫻井 修渡辺 糺熊田 馨仲吉 昭夫永山 剛久
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1993 年 53 巻 3 号 p. 281-289

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抄録

病理組織学的検索がなされた乳癌切除例中より乳腺粘液癌23例を選び, その生物学的悪性度を検討した.すなわち増殖細胞核抗原 (proliferating cell nuclear antigen, PCNA) を用いて免疫組織化学的染色を行い, 乳腺粘液癌の予後との関連性を比較した.また一部の症例では電顕的にも検討した.組織学的に純型粘液癌 (6例) と通常型浸潤性乳管癌を並存する混合型粘液癌 (17例) に分類できた.また純型及び混合型の粘液癌部分の腫瘍細胞密度の多寡により膠様成分優位部分と上皮成分優位部分に分類し, 各成分のPCNA labelling index (PI) を算出して比較検討した.その結果, 純型のPIは膠様成分優位部分で2.2±1.1%, 上皮成分優位部分で4.8±1.6%となり, 混合型は膠様成分優位部分で5.9±2.6%, 上皮成分優位部分で7.1±2.2%であった.すなわち混合型のPIは純型の膠様成分優位部分より有意に高く (P<0.01) , しかも純型では上皮成分優位部分は膠様成分優位部分よりも有意に高かった (P<0.05) .また混合型に並存する硬癌部分は10.1±3.0%, 充実腺管癌部分は9.4±4.1%となり, 混合型の粘液成分優位部分と純型より有意に高かった (P<0.05) .乳頭腺管癌部分では2.7±1.5%となり, 粘液癌部分と同様, または若干低値を示す傾向を認めた.更にPCNA陽性細胞の染色程度を弱陽性から強陽性まで3段階にGrade分類したところ, 混合型の上皮成分優位部分では純型・混合型の粘液成分優位部分より強陽性を示す腫瘍細胞が有意に増加していた (P<0.01) .従って, 乳腺粘液癌の予後判定因子として, 一般に述べられている組織型・浸潤度・細胞密度に加えて細胞増殖能も重要であり, PCNAの検索が有用であることが裏付けされた.

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