抄録
1980年から1989年までに教室で経験した単発直腸癌治癒切除症例112例のうち局所再発をきたした12例について, 臨床病理学的に検討した.局所再発率は10.6%であり, 再発までの期間は平均1年11カ月で, 3年以内に83.3%が再発した.局所再発は, 占居部位Rb, 腫瘍径4.1cm以上肉眼型3型, 壁深達度a2 (s) ~ai (si) , 下部直腸癌でewが4mm以下のものに高率に認められたまた, 転移陽性のリンパ節群が大きくなるほど局所再発も高率に認められた.手術術式で, Miles手術と低位前方切除術の間には, 局所再発率に有意の差は認められなかった.予後については, 局所再発群の5年生存率は37.5%と非再発群の77.6%に比べて有意に低率であった (P<0.01) .以上より, 直腸癌手術に際しては, 適切なリンパ節郭清と癌腫より十分な距離をおいた剥離, 切除が肝要と思われた.