抄録
乳房Paget (以下P) 病のP細胞では, 乳房外P病と比較してPAS, Alcian-blue (以下Albl) 染色が染まりにくいことは日常しばしば経験する.しかしこれらの事実についての教科書的記載は乏しく, 統計学的に両者の染色所見を比較検討した報告も見当たらない.そこで乳房P病におけるPAS, Al-blの染色所見の実態を, 経験例および文献例について明らかにする目的で以下の検討を行った.自験例は乳房P病7例, 乳房外P病9例を対象とし, 10%ホルマリン固定後パラフィン包埋材料を用い脱パラ後, P細胞の特異的腫瘍マーカーCEA, またはP細胞に陽性の抗ケラチンモノクローナル抗体KL1をPAP法にて免疫組織染色後, PAS, Al-blの組織化学染色を行う二重染色標本を作製した.各症例200倍, 5視野以上で, CEAまたはKL1陽性細胞に対するPASまたはAl-bl陽性細胞の比率を算定し, 乳房および乳房外P細胞における各々の陽性率をStudentのt検定にて統計学的に検討した.その結果, 乳房外P病と比較してP<0 01で乳房P病のPASおよびAl-bl染色性が有意に低いことが統計学的に証明された.文献例は医学中央雑誌に収載された過去約10年間の本邦P病全報告例を検索し, 組織学的記載のある343例を対象とし, その組織化学的染色所見を詳細に検討する計量文献学的手法を用いた.各症例を強陽性, 陽性, 弱陽性, 陰性に分類し, その結果をx2検定にて統計学的に比較検討した.その結果, 乳房外P病と比較してP<0.001で乳房P病のPASおよびAl-bl染色性が有意に低いことが判明した.さらに陽性の場合にも弱陽性を呈することが多いという事実も, 統計学的に証明された.以上より組織化学的染色所見の上で, 乳房P病と乳房外P病とは明らかに異なる事実が, 2つの手法により統計学的に確認され, 乳房P病と乳房外P病とは異なる範疇の疾患である可能性が示唆された.