抄録
CT画像における骨格筋の年齢的変化像を明らかにするため, 第4腰椎椎体高のCT写真の観察ならびに計測を行った.研究対象は医学部男子学生から高齢入院患者にいたる男女117名で, 病院患者については筋神経疾患や悪性腫瘍などの全身状態に著しい影響の病歴, 所見のあるものは除外した.断面積の計測はプラニメーターにより, 筋の観察は筋内の低密度域出現状態とそれに伴う筋形態の変化を基にして各筋ごとに0度から5度の6段階の観察基準を設定し, 腹直筋, 側腹筋群, 腰方形筋, 大腰筋, 脊柱起立筋の5筋について行った.結果は次の通りである.1) 組織構成比: 男性の場合, 学生 (20s) は骨筋層, 腹腔, 皮下脂肪層の順に高かったが, 壮年者 (20s, 30s) では骨筋層, 腹腔, 皮下脂肪とも等しく, 熟年者 (40s, 50s) から腹腔が最も高くなり, 入院高年群 (80s, 90s) では皮下脂肪が最も低くなった.女性でも男性と同様の年齢的傾向を示したが腹腔比は壮年者を除き女性の方が優っていた.2) 筋断面積: 各筋とも一般に男性の方が女性よりも大きく, 男性では熟年者から加齢的減少の傾向が著明であったが, 女性では加齢的変化は少なく, 入院高年群でわずかに減少し, 男性とほぼ等しくなった.3) 筋の観察結果: 低密度変化は学生の所見に比べて壮年者は軽度のものが多く現れ, 熟年者ではさらに顕著に現れ, 腹直筋, 側腹筋群および大腰筋で著しく, 老年者 (60s, 70s) では腰方形筋と脊柱起立筋で顕著であった.入院高年群ではすべての筋において高度な低密度変化が見られた.女性では壮年者において大腰筋と脊柱起立筋では変化度0を欠き, 各筋とも熟年者, 老年者で段階的な変化が見られた.なお, 最高変化度 (G5) の多くが現れた入院高年群では男女とも皮下脂肪層比は最も低く, 腹腔比は最も高く, 骨格筋の断面積では各筋とも最小で性差も認められなかった.