抄録
我々は寒冷ストレス負荷や水浸拘束ストレス負荷によりラット脾臓ナチュラルキラー細胞 (NK細胞) 活性が低下し, その際に視床下部室傍核 (paraventricular nucleus, PVN) と脳幹青斑核 (locus ceruleus, LC) に当該細胞の活性化を示すc-Fos発現がみられることを報告した.これらはストレス負荷が内分泌系や交感神経系を介してラット脾臓NK細胞活性を抑制することを示唆している.本研究ではアジュバント関節炎モデルラットを用い, 炎症性ストレスによりラット脾臓NK細胞活性がいかに変化するかを測定し, またその機序を探るためPVNおよびLCのc-Fos発現について検討した.Sprague-Dawly (SD) 系ラットの右側後肢足底皮下にmycobacterium butyricum含有AJUVANT COMPLETE FREUND液 (AJ液) を注入しアジュバント関節炎ラットモデルを作成した.後肢関節腫脹は後肢容積の変化を示標とした.足容積はAJ液注入3日目から有意に増大し, 炎症の発症が確認された.ラット脾臓NK細胞活性は51Crアッセイ法により測定した.アジュバント関節炎ラットのNK細胞活性は, AJ液注射後3日目から対照群ラットと比較し有意な減少を示し, 7日目で最も低い値となった.その後NK細胞活性は次第に回復し, 21日目では対照群と同程度になった.PVNのc-Fos発現はAJ液注射後3日目と7日目で増加したが, LCのc-Fos発現は認めなかった.これらの結果から, アジュバント関節炎ラットでは脾臓NK細胞活性が低下することが明らかになった.しかし寒冷ストレスや水浸拘束ストレスとは異なり脳内PVN内のc-Fosは一時的に発現したが, LCのc-Fos発現はほとんど観察されなかった.アジュバント関節炎ラットの脾臓NK細胞活性低下には脳内視床下部-下垂体-副腎皮質系がある程度関与しているが, 青斑核-ノルアドレナリン系は関与せず, 他の経路で調節されている可能性があることが示唆された.