昭和医学会雑誌
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ホルモン療法を受けている乳癌患者のQuality of Life (QOL) に関する基礎的研究
城丸 瑞恵中谷 千鶴子副島 和彦松宮 彰彦高 用茂渡辺 糺
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2005 年 65 巻 4 号 p. 345-355

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抄録

近年, 罹患率が増加している乳癌の治療方法としてホルモン療法がある.ホルモン療法によって腫瘍の縮小が期待されるが, 更年期症状の出現に伴うQOLの低下が予測される.そこで本研究はホルモン療法による更年期症状の出現状況とそれに関連した心理・身体・社会的状況について検討した.対象はホルモン療法実施中の41名で, そのうち治療前に閉経していたのは19人であった.手術後1.9±1.4年経過しており, 平均年齢は55.2±5.0であった.Kuppermanの更年期指数及びHADS指数を含めた調査項目を基にして半構成的面接法を行った.結果として, 約61%に何らかの症状が出現しており, 特に患側の肩・腕に関連した症状が出現する傾向がみられた.更年期スコアの総得点の平均値は20.5±9.5で血管運動神経障害の出現頻度が高く, 治療による卵巣機能の抑制が影響を及ぼしていると考えられる.更年期症状と不安・抑うつ度は正の相関がみられ, 身体症状と精神症状が強く関連することが示唆された.治療前に閉経していた対象よりも閉経をしていなかった対象群のほうが経済的負担について気にしており (p<0.05) , また年齢が低いほど家族に迷惑をかけていると感じている (r=.55, P<0.01) ことから, ライフステージに応じたサポート体制の必要性が考えられた.

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