抄録
左心不全を伴う急性心筋梗塞の治療には, 急性期の血行動態の改善と慢性期の左室リモデリングの抑制をはかることが重要である.このため我々は, 抗心不全薬であるcarperitide (α-hANP) の左室リモデリングに対する抑制効果について検討した.対象は左心不全を合併した発症12時間以内の初回前壁梗塞で, 緊急経皮的冠動脈インターベンションにて再疎通に成功した42例である.再疎通後, 硝酸薬などの従来の治療方法で経過観察された21例を対照 (C群) とし, 従来の治療に加えcarperitideを持続点滴静注した21例をH群として, その抗心不全作用および左室リモデリング抑制効果について検討した.血行動態がForrester分類のH-1へ改善するまでの時間はC群の1.6±3.5時間に対し, H群で1.0±0.7時間とH群で有意に短時間で改善した (p<0.05) .血漿中の脳性ナトリウム利尿ペプチド (Brain Natriuretic Peptide: BNP) 濃度の第2ピーク値はC群で201±101pg/ml, H群で119±61pg/mlとH群で有意に抑制された (p<0.01) .また左室拡張末期容積係数 (LVEDVI) の拡大率はC群で3.2±13.6%, H群で-3.2±8.4%とH群で慢性期に有意にLVEDVIの拡大が抑制され (p<0.05) , 左室駆出分画 (EF) の改善率もC群で5.7±10.6%, H群で12.2±12.5%とH群で慢性期に有意な改善を認めた (p<0.05) .以上の結果から, 左心不全をともなう急性心筋梗塞に対するcarperitideの投与は, 急性期の血行動態の改善に有効であるだけでなく左室リモデリングを抑制し, その結果慢性期の左心機能の改善にとっても有効である可能性が示唆された.