2019 年 Annual57 巻 Abstract 号 p. S266_1
動的に血管壁の機能的収縮・拡張に影響を与える要因として交感神経活性化による神経性・液性調節および内皮細胞由来の血管作動性因子がある.ストレス負荷により交感神経優位となる際の橈骨動脈筋緊張の動的変化からストレス反応を定量的に計測することを目指した.測定対象は手首付近の橈骨動脈とし,健常成人男性を対象に,市販の超音波エコーによる血管径連続計測,およびトノメトリ式連続血圧計による血圧の連続計測を行った(図).測定結果から動脈壁の膨らみ難さ(スティフネス)を計算し用いた.身体的ストレス負荷として冷水負荷を,精神的ストレス負荷として暗算負荷を用い,それぞれストレス負荷前後のスティフネス値の変化をみたところ,身体的ストレス負荷としての冷水負荷,および精神的ストレス負荷としての暗算負荷いずれにおいても無負荷時と比較して値が増加した.この測定は心拍出量,心拍数,末梢循環抵抗,循環血液量,血液回路の構成などを考慮する必要がなく,血管局所の血管径と血圧のみで決まる単純で信頼性のある数値であることから,ストレス反応を定量化する際に役立つ指標になり得ると期待される.