2021 年 Annual59 巻 Proc 号 p. 687-689
近年,日本では高齢化に伴い,認知症患者が増加傾向にある.認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)のうちに治療を開始することで,認知症の発症の遅延や,認知機能障害を回復させることができる可能性がある.従って,MCIのうちにその兆候を捉え,早期治療を行うことが重要である.そこで,我々は高齢化に伴う認知症者増加の抑制のため自宅にてMCIの兆候を早期検出することを目的とし,日常的に取得できる複数の日常行動情報を用いたMCIの検出手法を検討した.本手法は複数の日常行動情報,例えば会話,歩行,行動パターン等からMCIを検出することで日々の生活の中での些細な認知機能の低下を捉える方法である.その中でも本稿では日常会話に着目し,MCI検出への適用可能性の検討を行った.MCI検出に必要な特徴量は,認知機能と関連がある会話時の音響特徴,言語特徴,意味特徴の3面とした.言語特徴は一部の認知機能の低下による“定量的な会話内容の変化”を検知するため,音響特徴は言語特徴の変化に伴う“話し方の変化”を検知するために抽出を行う.また,意味特徴は本手法において考案したものであり,認知機能の低下の初期症状として見られる短期記憶の欠落を図るために“意味内容の変化”の抽出を図る.本報告はこれらの3面の特徴からMCIの検出が可能と仮定した特徴量を検出し,実験を通して特徴量抽出法の妥当性を検討した結果について述べる.