生体医工学
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経皮的電力伝送時における電磁生体安全性の推測-空芯偏平型経皮トランスをCAD人体モデル胸部に装着した場合-
柴 建次
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2023 年 Annual61 巻 Abstract 号 p. 206_2

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抄録

 補助人工心臓に無線で電力を送る方法に,経皮エネルギー伝送システム(TETS)がある.TETSの経皮トランスを患者の胸部に装着し,磁界の形で体内に電力伝送するが,電磁生体安全を見積ることは極めて重要である.それらの指標の中には,患者から大地に流れる高周波患者漏れ電流(Ip),経皮トランス周辺の生体組織の熱作用及び刺激作用がある.熱作用は局所SAR,刺激作用は体内電界強度(E)が,それぞれ指標として用いられる.しかしながら,Ip, 局所SAR, Eの指標を同時に推定する方法は確立していない. ここでは,完全導体上に寝ているCAD人体の胸部に,空芯偏平型経皮トランスを装着したモデルを作成した.人体モデルには成人女性(162cm, 28臓器)を用いた.伝送周波数400kHzの電源を送電コイルに接続し,体内の受電コイルには38.4Ωの負荷抵抗を接続し15Wを伝送した.電磁界解析には有限要素法を用い,TETSの電力伝送効率ηと前述の3つの指標を求めた. 解析の結果,ηは95.69%であった.Ip, 局所SAR, Eはそれぞれ9.98 mA, 85 mW/kg, 182 V/mであり,Ip, 局所SARはTETSの安全規制値を満たしたが,Eは規制値の1.69倍の値であった.本方法を用いることで3つの安全性評価が同時に可能となり,実用化のための安全性の見積として大変有用であることがわかった.

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© 2023 社団法人日本生体医工学会
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