抄録
本研究では、杉とクレゾール混合溶媒に硫酸を添加して溶媒タールの製造し、タールの製造、エポキシ基板の可溶化、溶媒タールの再生までの全ての操作を常圧下で実行できる可溶化プロセスの開発を目指す。杉やLVL合板に微量な硫酸を添加してクレゾール混合溶媒中200℃で加熱処理すると、杉と溶媒との反応からエポキシ基板の可溶化に適した溶媒タールが製造された。基板の可溶化率は、硫酸を0.2wt%程度添加すると85%以上に達した。杉、リグニンおよびセルロースを用いた実験から、エポキシ基板の可溶化に適して溶媒タールを製造するには、リグニンの基本骨格であるクレゾール系化合物が重要な役割を担っていることが分かった。エポキシ基板の可溶化物を急速熱分解すると、各種のアルキル基を有するクレゾール誘導体が高い収率で得られ、これら生成物を循環溶媒あるいは化学原材料として再利用できることが明らかにされた。