抄録
2000年以降、アジア・オセアニア域内における自由貿易協定(FTA)の締結は急速に進展しており、同域内の経済的関係はより緊密化している。本研究は鉛に焦点をあて、同域内における自由貿易の拡大と各国国内の鉛フローの関係をシミュレーション分析する。分析に際して、鉛部門を含む国際CGEモデルと、対象国国内における鉛の物質フロー解析モデルを統合的に用いる。シミュレーション分析の結果から、同域内における自由貿易が、同域内各国の鉛フローに様々な影響を与えること、特に、鉛の鉱石採掘量、廃棄埋立量、リサイクル量は、中国でいずれも増大する可能性が示された。本研究を進展させることで、同域内における自由貿易の特定物質に関する環境アセスメントが可能となり、自由貿易の進展が同域内の環境汚染を悪化させない方策について議論を深めることが可能となる。