抄録
本報告では,バイオマス利活用に伴う地域活性化のうち,地域住民のソーシャル・キャピタル(SC)に注目して調査分析を行った。アンケート調査を用いた分析により,以下の点が明らかとなった。(1)生ごみ分別という形で住民が事業に関与している大木町,稚内市では,事業により住民のネットワークの量・質に変化をもたらしていた。(2)すべての対象地域において,個人のSCが地域の愛着や満足度,定住意向につながることが示めされた。(3)大木町,稚内市の調査から,バイオマス利活用に伴うネットワークの変化が,個人のSCを増やすことが示唆された。以上より,バイオマス利活用を行う場合には,可能な限り地域住民を巻き込み,関与者を増やすことが重要であるといえる。多くの住民が地域資源であるバイオマスの利活用事業に関与することで,地域内でのSCが向上し,最終的に地域への愛着や満足度,定住意思につながることが期待される。