抄録
焼却主灰中の難溶性態Csの存在形態を明らかにし、溶出挙動が何に支配されるのかを明らかにするために、本研究では、Csを高濃度に含有する焼却主灰を対象にpH依存試験、粒径別の存在量把握、粒径別のpH依存試験を実施した。pH依存試験ではpHを1.9から10.8まで変化させた。難溶性態Csの溶出はpH依存性を示し、pHの低下に伴いSiやAlとともに溶出濃度が上昇した。これはガラス状非晶質のマトリクス内、あるいはアルミノシリケートとして存在する難溶性態Csが強酸に冒されたためだと考えられる。ただし、溶出濃度の増大した低pHは実際の焼却灰では生じ難く、埋め立て後長期間経過した灰でもpHは8.5程度とされる。こうした範囲での難溶性態Csの溶出は存在量の2~3%とわずかに過ぎない。一方、粒径ごとの難溶性態Csの分布や、溶出挙動の違いは確認されなかった。