抄録
廃棄物の焼却処理における灰分の挙動の理解と灰の化合物形態の把握は安全性を考慮した灰分のリサイクルを検討する上で重要である。これまで我々は熱力学平衡計算を用いてごみ焼却における灰分の変化について検討した。計算ではアルカリ金属や鉛の高い飛灰移行率や主灰における非晶質物質の生成を説明できたが、主灰の鉱物相や亜鉛などの重金属の分配挙動の一部で、実際の灰の分析結果と合わない点があった。この原因の1つとして、ごみには可燃物と不燃物が含まれているが、炉内において、不燃物は可燃物の燃焼によって生成した灰と完全には反応していないことが考えられた。本研究では、ごみの性状毎に焼却温度における化合物形態を熱力学平衡計算を用いて推定し、焼却炉内での灰分の変化の過程について考察した。