抄録
2013年10月に「水銀に関する水俣条約」が採択され、2017年8月16日に発効されることが決定した。これに伴い、水銀廃棄物を国内で適正に処理し、長期的に管理する必要性が生じている。 本研究では、水銀廃棄物の内の廃金属水銀等に含まれる廃水銀化合物の処理方法として、溶液中に溶解させた後、硫化させ硫化水銀とする湿式硫化処理が、廃水銀化合物を適正に処理し、長期管理するために十分であるかを検討した。本研究では、溶媒として超純水/希硫酸の二種類を用い塩化第二水銀に対し湿式硫化処理実験を行った。その結果、いずれの条件でも、水銀回収率は100%に近い値が得られ、生成物は安定性評価試験の環境基準値を満たした。しかし、希硫酸溶媒に関しては、生成物中の水銀含有割合が小さく、希硫酸溶媒条件での湿式硫化処理は今後改良の余地があり、純水溶媒条件での水溶性の廃水銀化合物の湿式硫化処理は有効な方法であると考えられた。