流通研究
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特集論文
消費者視点の業態研究―スクリプト概念にもとづく食品スーパーの業態認識―
本稿は,流通研究における業態を,消費者行動研究における行動パターンの認知構造体である「スクリプト」概念を通じて明らかにしようとするものである。本稿の構成は,まず,業態やスクリプトに関する理論を整理しながら,研究の立ち位置と仮説的視点を設定する。次に,食品スーパーを対象とした定量アンケート調査を実施した後,ネットワーク分析を応用して仮説を検証していくものである。仮説には次の3点を設定した。第一に,同一消費者の業態間の差異(コンビニエンス・ストアとの行動パターンの違い),第二に,同一業態内の個人差(利用頻度と来店前の行動パターンによる差異),第三に,食品スーパーらしさを形成しているカテゴリー知識との関連性の検証である。これらの結果から,食品スーパーはコンビニエンス・ストアと大きく異なる明確なスクリプトを持っていること,利用頻度の違いで「カゴをとる」「日配品売場に行く」「魚/刺身売場に行く」など一部の行動が強化され,来店前の行動パターンの違いで立ち寄る売場が異なること,来店前の行動パターンと知識構造の関連が強いこと,などが明らかになった。インプリケーションとして,これらの認知を利用することで,業態認識を操作したり,売場改善などに活用できることを示した。
髙橋 広行
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2014 年 16 巻 2 号 p. 49-75

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© 2014 日本商業学会
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