2020 年 23 巻 2 号 p. 17-31
価値創出・向上型の広域連携が進められる中で,圏域設定や価値創出に係る知見が求められている。先行研究では歴史文化資産を軸とした地域間のプレイス・ブランディングが示唆されたものの,その促進の駆動因としては十分に明らかにされたとは言い難い。同様に実務,研究に共通する課題として,地域間の産官が参加した委員会方式によるブランド・マネジメントの停滞が挙げられており,民間の活動を含めたマルチレベルのブランディングへの注目が求められている。本研究では,地域間のプレイス・ブランディングにおいて,複数のデータ収集方法を用い分析を行う混合研究法により,個の意識の把握や役割の重要性を明らかにし,ボトムアップ・ビルディングの効用を示した。そこで歴史文化資産が,連携の駆動因として機能しうることを見出した。さらに,地域ブランド資産を認識した個人が,地域間の繋がりの方向づけや意味づけを行う存在となりうることを確認した。