2024 年 27 巻 1-2 号 p. 37-52
先行研究において,ブランド志向と成果の関係には,組織全体へのブランド・アイデンティティの共有によるブランド・アイデンティティの訴求という媒介要因があり,複雑な因果関係であることが示されている。しかしながら,この複雑な因果関係の詳細なメカニズムについては十分に検討されていない。そこで,本研究は,過程追跡法を採用し,マツダを対象にメーカーから販売店までのブランド・アイデンティティ共有プロセスとメーカーと販売店のブランド・アイデンティティの訴求とブランド価値向上の関係を検討した。その結果,様々な阻害要因を克服しながらブランド・アイデンティティが共有されることが明らかになった。また,販売店によるブランド・アイデンティティ訴求がメーカーによるブランド・アイデンティティ訴求と一致,もしくは上回るときにブランド価値が向上することを示した。