2017 年 1 巻 1 号 p. 11-17
本稿の目的は,ブランド・コミュニティのメンバーがコミュニティで相互作用を行い,ブランド・コミットメントを高めるまでの影響過程を明らかにすることである。本稿により,メンバーはコミュニティで相互作用をするだけではブランド・コミットメントを高めないことがわかる。相互作用を通じてコミュニティと同一化する程度が高まることによって,ブランド・コミットメントが高まるのである。本稿では,こういった影響過程を経験的に検証している。
Muniz & O’Guinn(2001)によってブランド・コミュニティ概念が提唱されて以降,インターネットの普及も相まってこの概念に対する実務家・研究者からの関心は年々高まっている。さらに,近年のSM(ソーシャルメディア)の利用者の飛躍的な増加に伴い,コミュニティに参加する消費者の数も増加している。ブランド・コミュニティを管理する企業の多くは,メンバーに積極的にコミュニティ内で相互作用を行ってもらい,コミュニティを活性化させることを目標にしている(Tsai et al., 2012)。なぜなら,メンバーの相互作用の頻度が増加することによって,コミュニティにはさまざまな知識が蓄えられ,コミュニティの魅力が高まるためである。そして,メンバーはそういった魅力あふれるコミュニティに参加するなかで当該ブランドにとって有利な知識を獲得し,ブランドとの間に構築している関係性(以下,ブランドとの関係性)を強化していく(McAlexander et al., 2002; Woisetschläger et al., 2008)。こういった議論を前提に,先行研究では,メンバーの相互作用の頻度が増えることによってブランドとの関係性が強化されるという直接的な影響関係ばかりが検証されてきた。
しかし本来,相互作用の頻度とブランドとの関係性は直接的な因果関係で捉えるべきではない。本稿ではその点について議論すべく,メンバーの相互作用の頻度に着目し,それがいかにブランドとの関係性に影響を及ぼすかについて検討する。そして,メンバーが得るコミュニティとの一体感をコミュニティとの同一化という概念を用いて説明し,これが相互作用の頻度とブランドとの関係性を結びつける媒介変数として機能することを検証していく。
本稿の構成は次のとおりである。第2節では,先行研究をレビューし,仮説を構築する。第3節では調査概要や測定尺度,本分析で用いるサンプルの基礎解析について説明する。第4節で仮説を検証する。最後に,本稿で得られた知見を整理するとともに,今後の課題について論じる。
ブランド・コミュニティは,Muniz & O’Guinn(2001, p. 412)によって提唱された概念で,「当該ブランドを好む人々の社会的関係から構成される,地理的な制約を伴わない特殊なコミュニティ」と定義される。先行研究では,このコミュニティは当該ブランドを好む人々から構成されているため,そこでの相互作用は当該ブランドに肯定的な話題が主であるということが暗黙のうちに前提とされてきた(羽藤,2015)。それゆえ,メンバーがコミュニティに参加すればするほど当該ブランドに有利な知識を獲得し,それがブランドとの関係性の強化に寄与すると考えてきた。この結果,これまでの研究では相互作用の頻度とブランドとの関係性の直接的な影響関係ばかりが着目されてきた(Bagozzi et al., 2007; Casaló et al., 2008; Woisetschläger et al., 2008)。ここで相互作用とは,「人々が行為のやりとりを通じて互いに影響を与え,また,与えられる過程(船津,2012,p. 814)」のことであり,いわゆるメンバー間のコミュニケーションを意味する。
しかし,いくつかの研究での知見によれば,その前提の妥当性は疑問視される。たとえば,De Almeida et al.(2007)は,ブランド・コミュニティを消費者運営と企業運営のものに大別し1),前者では当該ブランドに関する話題だけでなく,ブランドとは関係のない話題が多く話されていることを特徴として述べている。他方で,後者では当該ブランドに関する話題が中心であるとも指摘している。他にも羽藤(2015)は,消費者運営のコミュニティ内で交わされる相互作用は当該ブランドやライバルブランドについての話題のみならず,雑談も極めて多いことを発見している。さらに,当該ブランドに肯定的な相互作用に加え,否定的な相互作用も多く存在していることを指摘している。
こういった議論に基づくと,ブランド・コミュニティ内での相互作用は当該ブランドに関する肯定的な話題が主であるという前提が妥当性の高いものではないということがわかる。それゆえ,コミュニティへの参加や相互作用の頻度が増えることが直接的にブランドとの関係性を強化すると考えるべきではない。その頻度が増えることによって,メンバーがライバルブランドに関する肯定的な知識や当該ブランドに否定的な知識ばかりを蓄える可能性も存在し,ブランドとの関係性が弱化する恐れがあるためである。こういった点を先行研究では見逃していたのである。
ここまでの議論から,相互作用の頻度とブランドとの関係性を直接結びつけるべきではないことは明白である。むしろ,何かしらの意識変化を媒介して結びついていると判断するほうが自然であろう。
2.2 コミュニティとの同一化本稿では,相互作用の頻度とブランドとの関係性を結びつけるメンバーの意識変化として,コミュニティとの同一化(identification with community)に着目したい。コミュニティとの同一化は,ブランド・コミュニティ研究で最も重要視されてきた概念である(Algesheimer et al., 2005; Thomas et al., 2013)。この概念は,メンバーがコミュニティと自分自身のイメージが一致していると認識し,それに対して好意的な感情を有することを示す(Algesheimer et al., 2005)。いわゆる仲間意識や一体感のことである。
先行研究では,メンバーがコミュニティと同一化する程度を高めることによって,そのコミュニティの中心に存在するブランドへの態度がより良好になることが明らかにされてきた(e.g. Algesheimer et al., 2005; Carlson et al., 2008; Hickman & Ward, 2007; Matzler et al., 2011)。メンバーはコミュニティと同一化する程度を高めると,自らが所属する内集団とその外部の外集団を強く意識するようになる。そして,内集団を外集団よりも高く評価することによって,その集団に属する自らの価値や自尊心を高める傾向がある(Hogg & Abrams, 1988; Turner, 1982)。この際,評価する対象には,コミュニティの中心に存在するブランドも含まれているので,メンバーはコミュニティと同一化する程度を高めることによって,当該コミュニティやその中心に存在するブランドへの態度をより良好にする傾向があるのである。また,消費者は自らと類似した消費者の影響を強く受ける傾向もあるため,そういった面からも当該ブランドへの態度を変化させていく(Ferguson & Kelly, 1964)。以上のように,コミュニティとの同一化は企業がブランド・コミュニティを管理し,ブランドとの関係性を強化するために重要視すべき意識変化なのである。
次に検討しなくてはならないのが,コミュニティとの同一化はいかに促されるかである。本稿では,その際に重要な働きをするのが相互作用の頻度だと考える。なぜなら,メンバーはコミュニティに参加し,そこで相互作用を行わなければ,コミュニティが重要視している価値であったり,そのコミュニティに特有の儀式や伝統,メンバーの趣味嗜好,パーソナリティ,性別や年齢といったさまざまな知識を得ることができないためである。それは,メンバーが同一化対象としてのコミュニティの魅力を感じられないことを意味する。本稿では,こういったコミュニティあるいはコミュニティを構成するメンバーについての知識をコミュニティ知識と概念化する。コミュニティ知識についてはどのような相互作用,たとえばそれが雑談であっても得られる。そして,メンバーはこういったコミュニティ知識を得ることによって,コミュニティをより魅力的に感じ,強い一体感や仲間意識を得ることができる。その結果,メンバーはコミュニティと同一化する程度を高めるようになる(Goodwin, 1996; Schouten & McAlexander, 1995)。以上のように,相互作用の内容がいかに些細なものであったとしても,何らかのやりとりをするという行為こそがコミュニティとの同一化には重要なのである。その意味で,相互作用の頻度が増えることはコミュニティとの同一化を促すと考えることができよう。
2.3 概念モデルと仮説本稿における概念モデルは図1である。このモデルでは,独立変数の相互作用の頻度と成果変数のブランド・コミットメントは直接結びついておらず,媒介変数のコミュニティとの同一化を媒介することによって結びついていることを示している。
本稿における概念モデル
従来の研究では,メンバーがコミュニティ内で相互作用を行えば行うほど当該ブランドに関する肯定的な知識を蓄えることができ,それがブランドとの関係性の強化につながると考えてきた。そして,その原因である相互作用の頻度と結果であるブランドとの関係性の直接的な影響関係が検証されてきた。しかし本稿でのレビューから,メンバーが相互作用から得られる知識は極めて多様であるため,その頻度が増えることがブランドとの関係性が強化されることを意味するわけではないことが明らかになった。そこで,本稿では相互作用とブランドとの関係性は,コミュニティとの同一化を媒介して結びついていると考えるべきであることを議論した。メンバーは多様な相互作用を行うなかでコミュニティ知識を蓄え,コミュニティとの一体感を得るようになる。そして,そのコミュニティから影響を受けながら当該ブランドへの思いを強くしていくのである。
なお,本稿ではブランドとの関係性を示す代理変数として,ブランド・コミットメントという消費者が有するブランドへの愛着を示す概念を用いることにする。ブランド・コミットメントが高まれば,消費者の再購買を意味するブランド・ロイヤルティやクチコミ意向,コミュニティへの参加意向も高まることが示されているので(e.g. Carlson et al., 2008; Odin et al., 2001),この概念を用いることで企業のブランド・コミュニティ管理においても示唆に富む発見が期待できるためである。ここまでの議論から,次の仮説を提示したい。
H1:相互作用の頻度はコミュニティとの同一化に正の影響を及ぼす
H2:コミュニティとの同一化はブランド・コミットメントに正の影響を及ぼす
H3:相互作用の頻度とブランド・コミットメントとの関係は,コミュニティとの同一化によって媒介される
本稿で分析したデータは,マーケティング調査会社の株式会社JMRサイエンスに協力してもらい,2013年12月から2014年1月にかけて,日本全国に住む20–60代の男女計600人からインターネット調査により回答を得たものである。本稿ではブランド・コミュニティ参加者を念頭に分析するため,スクリーニング項目として特定の製品やサービスのブランド・コミュニティに参加しているかどうかを質問している。そこで,参加していると回答した110人から,すべての項目で同じ回答をしている8人を除く,計102人のデータを分析する。回答者の性別や年代は表1にまとめる。なお,本論文では,より幅広い観点からブランド・コミュニティを検討するため,特定のブランド・コミュニティを対象とした調査は行わない。
年代 | 合計 | コミュニティ参加人数(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 合計 | 男性 | 女性 | 合計 | ||
20代 | 60 | 60 | 120 | 13(21.7%) | 14(23.3%) | 27(22.5%) | |
30代 | 60 | 60 | 120 | 10(16.7%) | 15(25.0%) | 25(20.8%) | |
40代 | 60 | 60 | 120 | 11(18.3%) | 8(13.3%) | 19(15.8%) | |
50代 | 60 | 60 | 120 | 11(18.3%) | 10(16.7%) | 21(17.5%) | |
60代 | 60 | 60 | 120 | 3 (5.0%) | 7(11.7%) | 10 (8.3%) | |
合計 | 300 | 300 | 600 | 48(16.0%) | 54(18.0%) | 102(17.0%) |
コミュニティ参加者は全体の17.0%であり,年代を基準に見ていくと若年層のほうが高齢層よりも参加率が高い傾向にあった。年齢による差は見られた一方で,性別による差はさほど見られなかった。
メンバーの参加コミュニティの種類については,Facebook上のコミュニティ2)や2ちゃんねる上のスレッド,企業ホームページ上のコミュニティ等どのような種類のコミュニティに参加しているかを複数回答可で聞いている。その結果,参加コミュニティの種類はFacebookと2ちゃんねるが60人ずつ,企業ホームページ上のコミュニティが4人,Facebook以外のSNS上のコミュニティが4人,その他が1人だった。なお,仮説検証に用いる測定項目に関しては,回答者が「最もよく閲覧するコミュニティ」を念頭に回答してもらった。
3.2 測定尺度調査に用いた測定尺度は自由回答の相互作用の頻度を除くと,11段階のリッカート尺度によって測定している。相互作用の頻度については,1週間に何回程度コミュニティに参加/相互作用をするかを自由回答で質問している。成果変数のブランド・コミットメントはCoulter et al.(2003)から3項目,媒介変数のコミュニティとの同一化はAlgesheimer et al.(2005)から3項目採用している。具体的な測定項目に関しては表2に記載している。
なお,本論文で採用したブランド・コミットメントとコミュニティとの同一化は全て英語文献で提示されているものであるため,Douglas & Craig(1983)が推奨するバックトランスレーションを行っている。その方法は次のとおりである。まず,筆者が測定項目を全て日本語に翻訳した。次に,プロの翻訳者に日本語に翻訳した測定項目を全て英語に翻訳しなおしてもらう。そして,英語のネイティブスピーカーに元の英語での測定項目と,翻訳しなおした測定項目を比較してもらい,意味やニュアンスに違いがないかを確認してもらった。修正する必要があると判断した項目は,違いがなくなるまで修正を繰り返した。
本稿では仮説を検証するため媒介分析を行う(Baron & Kenny, 1986)。それに先立ち,Anderson & Gerbing(1988)が提唱する2ステップ・アプローチに則り,測定尺度の信頼性と妥当性を検証した(表2)。まず,分析に用いるデータに偏りがないかを確認するため,天井効果およびフロア効果の有無を検証した。その結果,すべての項目において基準を満たしていることがわかった。
概念名 | 平均値 | SD | CR | AVE | 因子負荷量 |
---|---|---|---|---|---|
ブランド・コミットメント | 5.284 | 1.925 | .903 | .757 | |
私は今,使っているこの製品(サービス)に本当に愛着を持っている | .844 | ||||
自分にとって一番だと思うため,いつもこの製品(サービス)にこだわる | .892 | ||||
この製品(サービス)がずっと気に入っている | .873 | ||||
コミュニティとの同一化 | 5.151 | 2.004 | .876 | .704 | |
コミュニティの他のメンバーと私は同じ目的を共有している | .937 | ||||
コミュニティの他のメンバーとの交友は私にとって大きな意味がある | .816 | ||||
このコミュニティの一部に属していることを自覚している | .753 |
信頼性に関してはComposite Reliability(CR)から検討した。ブランド・コミットメントとコミュニティとの同一化の双方ともCRが基準となる値の.60は上回っていることを確認することができたため,測定項目の信頼性を確保することができたといえよう(Bagozzi & Yi, 1988)。
収束妥当性に関しては,各潜在変数から観測変数への因子負荷量ならびにAverage Variance Extracted(AVE)から判断し,その双方が基準となる値(因子負荷量 >.60,AVE >.50)を上回っていることを確認した(Bagozzi & Yi, 1988; Fornell & Larcker, 1981)。これらの結果から,収束妥当性が確認されたと判断することができる。
弁別妥当性については,AVEの平方根(
媒介分析の手順は次のとおりである(Baron & Kenny, 1986)。まず,独立変数Xと従属変数Yの間に直接的な影響関係が見られるかを検証する。次に,Xと媒介変数Mの間に影響関係が見られるかを確認する。最後に,XとY,Mの3変数を用いて分析を行う。この際,先の分析で有意な影響が見られたX→Yが非有意になり,X→MとM→Yが有意であれば媒介効果(完全媒介)が認められると判断できる。ただし,Zhao & Chan(2010)によれば,X→Yが非有意にならず有意のままであっても,X→MとM→Yが有意であれば媒介効果(部分媒介)があることを議論するには十分である。本分析もこの考えに従う。なお,ブランド・コミットメントとコミュニティとの同一化については下位尺度得点を算出し(表2),その値を用いて分析を行っている。
まず,独立変数である相互作用の頻度と従属変数のブランド・コミットメントのみを用いて回帰分析を行った結果,有意な正の影響が見られた(β=.780,p<.01)。次に,相互作用の頻度と媒介変数であるコミュニティとの同一化についても回帰分析を行ったところ,ここでも有意な正の影響が見られた(β=.823,p<.01)。最後に,3つの変数を用いてパス解析を行うと(相互作用の頻度→ブランド・コミットメント,相互作用の頻度→コミュニティとの同一化,コミュニティとの同一化→ブランド・コミットメント),相互作用の頻度からブランド・コミットメントへの直接的なパスが非有意となった。他方で,相互作用の頻度からコミュニティとの同一化へは(β=.810,p<.01),コミュニティとの同一化からブランド・コミットメントへは(β=.824,p<.01)と双方のパスにおいて有意な正の影響が見られた。この結果から,統計的にも相互作用の頻度とブランド・コミットメントは,コミュニティとの同一化を完全媒介する形で結びついていることが明らかとなった。したがって,H1とH2,H3を支持することができる。
本稿では,相互作用の頻度とブランドとの関係性の影響関係を定量的に検証してきた。その結果,相互作用の頻度が増えることが直接ブランドとの関係性を強化するわけではなく,コミュニティとの同一化という態度変容を促し,それがブランドとの関係性の強化に繋がることを明らかにすることができた。最後に,本稿における貢献と今後の課題をまとめたい。
本稿における貢献は,相互作用の頻度とブランドとの関係性を直接的に結びつけることが不適当なことを明らかにしたことである。先行研究では,ブランド・コミュニティ内での相互作用は,当該ブランドに関する肯定的な話題が主であることが前提とされてきた。その結果として,相互作用の頻度が増えることはメンバーが有する当該ブランドに関する肯定的な知識の増加を意味し,それが当該ブランドとの関係性の強化を促すと考えていた。しかし本稿では,メンバーが相互作用を行うことによって得られるコミュニティ知識に着目し,それがコミュニティとの同一化を促す要因として機能することを述べた。そして,相互作用の頻度とブランドとの関係性(ブランド・コミットメント)はコミュニティとの同一化を媒介することによって間接的に結びついていることを経験的に明らかにした。さらに,その効果が完全媒介であることも発見している。
この結果はブランド・コミュニティ研究において大きな意味を持つ。先行研究では,メンバーがコミュニティに参加する中で得られるコミュニティ知識には着目してこなかった。しかし,本稿により,コミュニティ知識がコミュニティとの同一化を促し,それがブランドとの関係性の強化に寄与することを提示した。これにより,メンバーがコミュニティ内でどのようなコミュニティ知識を得るかであったりどのような人間関係を構築するかといった社会的な側面に注目する意義を示すことができた。さらに,ブランド・コミュニティ上での相互作用が当該ブランドに肯定的な話題が主であるという前提の妥当性が低いことを主張し,今後の研究では相互作用の質的内容に着目する必要性があることも指摘することができた。
以上の貢献から,企業がブランド・コミュニティを管理する際は,相互作用の頻度を増やしコミュニティを活性化させることを目指すのみならず,その結果としてメンバーがコミュニティと同一化する程度を高めることを意識すべきだと提言することができよう。そのために,メンバーのアイデンティティを強化するようなブランド・イメージやコミュニティのイメージを積極的に伝えていくべきである。
以上の貢献の一方で,本稿には課題も残されている。たとえば,本稿では相互作用の頻度とブランド・コミットメントを結びつける変数をコミュニティとの同一化のみで捉えたが,今後の研究ではそれ以外の変数にも着目すべきであろう。また,頻度だけではなく,実際にコミュニティを閲覧している時間なども分析対象とすることも考えられる。さらに,コミュニティとの同一化は相互作用の頻度以外でも促されるであろう。たとえば,コミュニティを代表するブランドの魅力が高まれば,これまで以上にメンバーは当該コミュニティを用いて自らを表現したいと思うようになるだろう。今後の研究においてはこれらの課題を解消していきたい。
本稿の執筆にあたり,近藤公彦編集長と匿名レフェリーの先生方から大変有益なコメントをいただきました。ここに記して,感謝申し上げます。