2018 年 2 巻 2 号 p. 49-56
本稿では,禁煙言説の歴史的変遷を分析することを通じて,マクロ・ソーシャル・マーケティングの可能性について検討する。これまでのソーシャル・マーケティング研究では,商業マーケティングの応用はもとより,アップストリームやマーケティング・システムにまで焦点を広げた研究が考察されてきた。しかしこれらの研究では,特定の主体群が意図的に個人の態度変革や社会変革をもたらすことに焦点が当てられ,マクロな社会現象として個人の態度変革や社会変革が生じるという過程についてはあまり焦点が当てられてこなかった。本稿では,こうした課題に対し,日本における新聞記事上の禁煙言説の歴史的変遷を分析することを通じて,マクロな社会現象として個人の態度変革や社会変革を捉える意義を示す。この試みは,いずれも探索的ながら,第一に,マクロな社会現象を捉えるというマクロ・ソーシャル・マーケティングの研究視点と意義を提示するとともに,第二に,その具体的な分析手法を提示することになる。