抄録
著者らは積層型圧電素子(PZT)と弾性ヒンジとてこ機構を組み合わせた変位拡大機構で構成される1自由度のナノモーションアクチュエータ(NMA)の研究開発を行ってきた.NMAの特性は,2次遅れ系で共振周波数が約4.92kHzと高く,変位拡大機構を用いることで最大変位量が約12.5μm/150Vを達成していることである.また,可動部先端に負荷質量を取り付けて,PID制御系を構成し制御性能の検証を行ったところ,ゲイン交差周波数は3.07kHzに達し,位置決め精度±0.11nm(3σ)以内の高速な動作を実現した.本研究では,Fig. A1に示すように, PZTと変位拡大機構で構成されるNMAをX軸方向に配置し,その固定部に新たに設計されたPZTと並進機構を組み合わせたアクチュエータをY軸方向に配置することで, X-Y平面内動作型のNMAの設計を行った.つぎに, XY型NMAの基礎特性を測定し,モデル化を行い,その制御性能の検証を行った. X軸, Y軸それぞれ独立した制御系において,ゲイン交差周波数約1kHzが達成でき, Fig. A2に示すような半径10nmのリサージュ円が実現され,高速で高精度な平面内位置決めが可能なことを確認した.