抄録
月面開発において,地球からの物資の輸送には多大なコストや時間が消費されるため,月土壌の利用(In-Situ Resource Utilization, ISRU)により地球からの物資に依存しない手法が求められている.そのためには大量の月土壌を搬送するシステムが必要である.そこで本研究では誘電エラストマーという材料に着目し,この材料を用いた誘電アクチュエータにより振動を発生させる振動搬送装置を開発した.その結果,AC電圧1000V_<p-p>印加時において鉛直方向への1G以上の加振加速度が確認でき,周波数35Hzの条件において最大19mm/sの搬送速度と1.86g/sの搬送量を実現した.また,個別要素法を用いたシミュレーションにより,搬送速度に関して実験との一致を確認した.その上で月面と地上でのシミュレーションの比較を行い,月面での搬送速度は地上の約2倍となり月面上での性能を向上が予測できた.