日本重症心身障害学会誌
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P1035 医療ケアを受けながら地元小学校に通う一症例について
−友達たくさん出来たよ!−
川谷 歩小泉 浩二片桐 浩史
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2011 年 36 巻 2 号 p. 331

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抄録
はじめに 医療ケアが必要な児童の受け入れは、地元の学校で困難なことが多い。このたび電動車椅子を早期に導入し、医療ケアを受けながら地元の小学校に通うことが出来た症例について報告する。 症例紹介 患児はメロシン欠損型先天性筋ジストロフィーで11歳女児である。機能障害度はステージVIII、WISCIII:FIQ80(VIQ92、PIQ71)。月齢11より当センター外来訓練開始。3歳〜夜間NPPV導入。6歳〜経鼻経管栄養開始。7歳〜胃瘻増設術施行。 経過 1.電動車椅子の早期導入:11カ月〜人見知りが強く発語の少ない状態が続く。2歳2カ月、国立特殊教育研究所の協力で低速度の電動カートを使う。2歳10カ月、電動車椅子のコントローラーを4ボタンスイッチに改造して貸し出す。3歳5カ月、電動車椅子で自由に屋外も移動。自分の操作で好きな場所に行けることで、興味も拡がりコミュニケーション活動・対人関係・操作活動もより活発になった。 2.「親子通園」での支援:5歳より個別訓練を終了して親子通園を開始。意図的に役割を与え、大人を介したやり取り遊びの中で行動が積極的になった。保護者の希望で地元の保育所との並行通園を始めた。地元保育所に通うにあたり、保護者を中心に「サポートブック」の作成に取り組んだ。 3.地元校での生活の拡がり:入学時から蘇生バッグでの排痰介助を担任に伝え、学校でもバッグを使用しての排痰が上手くできる様になった。3年生で経口摂取が困難になり、胃瘻からの注入を訪問看護師に依頼した。障害児学級と普通学級を行き来して授業を行い、放課後は学童保育を利用。休日は一人で友達の家に遊びに行っている。 まとめ 幼少期に移動手段を獲得し、コミュニケーション活動を活発にすることで、友達とも上手く関われた。医療ケアが必要な患児だが、地元校でたくさんの友達に囲まれて教育を受けている。今後も地域への医学的情報の提供や、社会的な施策・活動の工夫などを一緒に行いたい。
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