抄録
はじめに
疥癬は多彩な発疹を生じるが、角化型以外は隔離も必要なく、感染確率も少ない。今回発見が遅れ収束に長期を要した疥癬流行の経験をした。
経過と対応
H21年末より、A病棟(長期入所18名は1名を除き寝たきり)で原因不明の湿疹がある長期入所者2名が、皮膚科医の加療(ステロイド塗布等)で徐々に増悪、22年4月末に他の皮膚科医が、限局性角化型を疑い疥癬確定1名と疥癬疑い1名と診断し、イベルメクチン内服、クロタミトン等塗布、個室隔離し、接触予防策とガウンテクニックを施行した。その後7月、A病棟に6月より発症した新たな確定診断患者1名と症状再燃患者1名がおり、またその後A病棟短期入所利用後の患者(通所患者を含む)にも発症し、9月にA病棟では長期入所者累計8名が確定あるいは疑いとなり流行した。病棟閉鎖し、安息香酸ベンジルローション塗布とイベルメクチン内服に治療を変更、フロアをゾーン別に確定、疑い、無症状の患者にわけ、清掃、シーツ・リネン類・職員の着衣の管理(通所・PT/OT訓練関係を含む)や面会制限を強化し、交差感染を防ぐ努力をした。その後確定・疑い患者は散発したが、23年1月末に疑い患者の治療を最後に収束した。イベルメクチン内服患者は計14名で、3回以上内服した患者が6名みられた。
考察
1−6カ月の潜伏期、診断が遅れ潜伏期患者が増えたと考えられたこと、A病棟はほぼ全員寝たきりの患者だったことから、上記経過になったと考えるが、6月頃から徐々に大流行した説明は難しい。イベルメクチンは脂溶性のため、経管栄養患者では白湯で溶かした注射器による注入では十分量の吸収が困難との指摘があり、12月より栄養剤に溶解させることに変更した。当初のイベルメクチンの効果が小さかったことも流行期間に影響した可能性はあるが、当院のような施設では原因不明の発疹には、疥癬を早期に疑い、診断加療、交差感染を防ぐ対策を開始することが重要と考えられた。