日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-C-13 ICT(情報通信技術)を利用した在宅重症心身障害児(者)家族の交流
三田 勝己赤滝 久美平元 東林 時仲岡田 喜篤渡壁 誠
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2013 年 38 巻 2 号 p. 280

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抄録
はじめに 本研究はICTを活用した在宅重症心身障害児(者)(以下、重症児)の遠隔医療のみならず、訪問教育や共同生活など地域生活を幅広く支援する情報ネットワークの構築に従事してきた。こうした情報ネットワークは支援提供機関から利用者への縦型支援と位置づけられる。一方、重症児の家族同士が気軽に交流でき、苦悩や喜びを分かち合うことができれば、精神的に大きな支えや活力となる。本研究は、重症児家族の交流を促す横型の情報ネットワークを構築し、実証運用を行うことを目的とした。 方法 実証運用の協力者は北海道オホーツク地域に在住する3カ所の重症児家族であった。この地域に点在する重症児居宅は互いに数10kmから50km離れており、重症児を同行した相互の家族交流は困難であった。この3居宅にはパソコンがあり、インターネット接続も可能であったので、インターネットテレビ電話:Skypeを利用できる環境を整備し、運用を開始した。また、北海道療育園にも同様のICT環境を設置した。 結果・考察 実証運用は現時点で6カ月を経過した。運用評価は技術的な問題点、交流頻度、時間、交流内容記録、家族との面談を手がかりに行った。技術的課題としては、映像が途切れる現象がみられ、複数個所の同時ビデオ通話に対応するには通信回線やパソコンの速度が十分でないことが推察された。また、Skypeの操作が苦手であったり、予めパソコンの立ち上げが必要であるために通常の電話より使いづらいことが指摘された。交流頻度や時間はおおむね週1回30分から1時間程度であった。家族からは、ICTによってお互いに顔をみながら気楽に話ができることで気持ちが休まり、癒しにつながったとの感想が聞かれた。一方で、重症児本人にとっては経験のない、非日常的な場面であったことから、筋緊張が高まったり、興奮状態が続いたなど運用面で配慮すべき課題も明らかになった。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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