抄録
目的
障がいのある子どもを持つ保護者の支援ニーズは多岐にわたるが、実際の相談・支援の現場においては専門職と保護者の間にギャップが生じることも少なくない(野辺、2008)。この「支援ニーズと実際の支援のギャップ」という問題の背景要因について探索的に明らかにすることが本研究の目的であった。
方法
東海・北陸エリアにある7つの県を対象として、障がい児の親の会に所属する保護者にアンケート調査を実施した。アンケートの内容は、1)子どものプロフィール(障害種・発達状況など)2)現在受けている各種の支援(身体機能訓練・ことば・生活介護・きょうだい支援・医療的ケアなどを含む全13項目)とその必要性。3)自由記述等 で構成された。
有効回答数は121名(回収率82%)であった。子どもの年齢は4歳〜43歳(中央値12歳)であった。
結果
重症心身障がい児の保護者は「生活介護」、「医療的ケア」そして「家族に対するカウンセリング」の支援を要望する回答が多かった。また、就学前と就学後を比較すると、就学後において特に「子どもの預かり」に対するニーズが高いが、「必要なのに支援がない」という回答も多かった。サービスの充実度も含めて、相対的に就学前の支援に対する満足度が高い傾向がみられた。
考察
今回の結果から、重症心身障がい児を持つ保護者のニーズの一端が明らかになった。ニーズの中には、地域資源を利用すれば充足可能なものも含まれていた。この点は、当事者への情報提供の仕組みを改善することで対応できる。また、就学前までの支援を就学後につなげる・移行する体制作りが望まれていると考えられる。この点については、特別支援学校を始めとする教育機関が就学前段階からのサポートに関与することについて検討を進めていきたい。