日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-2-B-03 当センターでの見え方に着目した利用者への取り組み
高馬 奈津子花石 佳奈子崎山 麻理
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2013 年 38 巻 2 号 p. 289

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抄録
目的 視覚機能が発達に影響を及ぼすため、視覚機能トレーニングの必要性が重要視されている。重症心身障害児者(以下、重症児者)は、反応の乏しさから発達段階に適した遊びが提供されず、感覚遊びの段階に留まり続けるケースがあると考えた。 そこで、見え方に着目した取り組みを実施し、自発的な反応を引き出すことを目的とした。 対象と方法 対象は、視覚機能が対光反応のみの利用者2人(30〜40代)と色への反応はあり眼球運動が弱い利用者1人(20代)。下記の取り組みは、当院倫理委員会の承認を得た。 1.見え方等の評価 視覚を中心とした感覚面の評価、独自に作成した「認知と遊びの発達チェックリスト」「視覚の発達チェックリスト」での評価を実施。 2.見え方に配慮したおもちゃの作成 対光反応のみの利用者にはメリーゴーランドに光るおもちゃをつけた。白黒の縞模様への反応がある利用者には白黒の羽の風車や白黒のテープを貼りつけたペットボトル(ビーズによる聴覚刺激、硬さの違いによる触覚刺激に配慮)を作成した。 色への反応はあり眼球運動が弱い利用者には様々な長さのベルクロテープをボードからはがすのを追視させたり、目で追える長さのスロープのおもちゃを作成した。 これらのおもちゃをリハビリプログラムに取り入れた。 結果と考察 対光反応のみの利用者は、メリーゴーランドでの強い光刺激を呈示すると感覚遊びが止まり、眼球運動が引き出せることがあった。色への反応はあり眼球運動が弱い利用者は、注意を引きやすい白黒の縞模様を見ることを促し、注視の持続性を高めていくこと、実際に介助で本人の手を使っておもちゃを動かす場面を見せることで自発的なリーチがみられた。 このことから、見え方に着目した取り組みを実施することで、認知発達段階に沿った自発的な反応を引き出せることが示唆された。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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