日本重症心身障害学会誌
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O-2-B-04 アイトラッカーを用いた重症心身障害児者の視運動性眼振の記録
鈴木 賢治山田 徹人小町 祐子内山 仁志新井田 孝裕梅原 幸子谷口 敬道関森 英伸下泉 秀夫
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2013 年 38 巻 2 号 p. 290

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抄録
はじめに 重症心身障害児者(以下、重症児者)の療育において、対象者が「見えているか否か」「どの程度見えているのか」などの視力の情報は重要であると考えられる。しかし、重症児者の視力検査は、自発応答が困難であるため健常者と同様の自覚的検査での評価が難しく、他覚的検査が用いられることが多い。臨床上、頻用される他覚的視力検査には視運動性眼振(以下、OKN)を利用する方法や視覚誘発電位(以下、VEP)を記録する方法、強制選択選好注視法などが存在する。なかでも、結果を客観的に評価でき、非接触でも測定ができるOKNを利用した他覚的視力検査は重症児者に有効であると考えられる。そこで今回、重症児者を対象に非接触式で眼球運動の記録が可能なアイトラッカーを用いて、OKNの記録を試みたので報告する。 対象および方法 対象は医療型障害児施設入所重症児者6名(男性4名、女性2名)とした。OKNの記録には視線解析装置アイトラッカーTX300®(Tobii社製)を使用した。視覚刺激はアイトラッカーのプライマリモニタ(23inch、1920×1080 pixel)に白黒の矩形波縞を提示し、5°/sと10°/sの等速度で右向きと左向きに動かした。1回の刺激は5秒間とし、刺激の間にブランク画像を提示した。刺激のサイズは0.3および1.0cycles/degreeの2種類とし、視距離は65cmとした。 結果 6名中4名は1.0 cycles/degree(小数視力換算0.03)の視覚刺激でOKNの誘発が認められた。利得は0.64であった。1名は先天眼振にOKNが重畳していた。1名は急速相が欠如していたが、緩徐相は誘発されていた。 結論 今回、正面視が可能な対象のOKNの記録が可能であった。重症児者の客観的視覚機能評価方法のひとつとして、アイトラッカーによるOKNの記録は有効であると考えられた。 謝辞 本報告は独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(B)課題番号22330260の助成を受けた。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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