日本重症心身障害学会誌
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シンポジウム4:地域生活と医療的ケア 快適に生きるための課題とこれから
医ケアを要する超重症児の短期入所の現状と課題
−受け入れ施設から見た課題と将来−
竹本 潔
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2014 年 39 巻 2 号 p. 215

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抄録
高度な医療的ケアが必要な小児が退院して家庭で暮らすケースが増加している。しかし退院後の在宅療養では、介護されるご家族への長期にわたる相当な肉体的、心理的負担が発生し、日常的な外出の困難や慢性的な睡眠不足など多くの問題を抱えながら生活されている現状がある。大阪府の調査によると、家族が地域で安心して暮らし続けるうえで最も必要と感じているサービスはショートステイ事業所の増加であった。重度の障害を持った児を短期間施設でお預かりするショートステイはご家族が最も望まれる支援のひとつであり、今後小児在宅医療を推進するにあたって必要不可欠な支援である。当センターのショートステイの現状と課題について報告する。 当センターは大阪市南部に位置し、1970年肢体不自由児施設「聖母整肢園」として開設された。2006年大阪市の委託を受けて重症心身障害児施設「フェニックス」を新たに開設し、同時に全体施設を「大阪発達総合療育センター」と命名した。現在入所施設としての機能は、医療型障害児入所施設(主として肢体不自由児)「わかば」40床、医療型障害児入所施設(主として重症心身障害児者)「フェニックス」80床で、ショートステイはフェニックスの17床で運営している。 2008年度から2012年度の5年間のショートステイの利用状況を調査した。登録者数約600名、年間総利用のべ人数約1000人、年間総利用のべ日数約4000日で、1日平均約11人が利用していた。キャンセル待ちが平均37人/月ある一方で、平均11人/月の急なキャンセルがあった。全体の49%が3日以内の短期利用であり、51%が18歳以下で医療要求度が高い小児が多い傾向を認める一方、30歳以上も全体の17%を占めていた。全体の46%が超・準重症児で、人工呼吸器ケースは年々増加し2012年度は全体の12%を占めた。利用理由はレスパイト(介護者の休息)が52%で最多であった。次子出産のための利用は合計47回あり、次子出産に際して安心して預けられる施設の存在は両親の大きな支えになると思われた。利用者の約5%が滞在中に体調不良で追加の医療処置を必要としており、中には死亡例や重篤なケースもあった。 問題点としては、慢性的なベッド不足、多数のキャンセルとその対応、体調不良時の対応、同じ医療的ケアであっても病院・主治医・家族によるやり方の違い、生活面(食事介助、姿勢など)での個々のケアの難しさがあげられた。 今後レスパイトケアを含めたショートステイの充実が、重症心身障害児者の在宅支援の大切な鍵になると思われた。供給体制の量的な充実はもちろんであるが、将来的には単に児を安全にお預かりするだけでなく、児がそこでどう過ごしているか質的な充実も課題となってくるであろう。 略歴 竹本潔(たけもときよし) 1966年生。1990年北海道大学卒業。大阪厚生年金病院小児科、大阪大学小児科、国立大阪病院麻酔科、大阪府立千里救命救急センター、日生病院小児科、阪南中央病院小児科、大阪府和泉保健所を経て、2006年フェニックス開設時より大阪発達総合療育センター勤務。
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© 2014 日本重症心身障害学会
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