2010 年 81 巻 1 号 p. 57-59
近年における家畜の能力の飛躍的な向上には,育種理論の進展とともに新しい繁殖技術の応用が貢献している.繁殖技術は,胚移植から受精卵クローン,体細胞クローンへと発展してきた.クローン技術による家畜の作出効率が低いことから,コストのかかる育種への応用を提案する.肉用牛育種においては,優良種雄牛のクローンによる永続的な使用は改良を停滞させ,遺伝的多様性を減少させることから好ましくないが,受精卵クローンや幼牛クローンを用いた間接検定は年あたりの遺伝的改良量を高める可能性がある.黒毛和種においては現行の育種システムにおいても遺伝的改良がなされていることから,フィールドで測定が困難な形質の改良に取り組むときに,クローン技術を活用することが考えられる.