抄録
近年医療水準の向上に伴い高次機能病院での救命率は上昇したが、一方で後障害を抱えて退院し療育へ移行する症例も増加している。また、医療・介護の質向上のため療育病院入所症例の生存期間も飛躍的に伸びている。その結果療育施設は相対的に不足の状態となり、解決策として在宅療育への移行が推進されている。現在、高次機能病院から療育病院を経由し地域病院との関係が希薄なまま在宅療育へ移行する症例が多くを占めているため、在宅で肺炎などの一般的な病気に罹患したときでも、受け入れる地域病院が容易には見つけられない。受け入れる地域病院からしても症例の安定状態を把握していないために、治療方針や退院時期の決定に難渋することもある。また状態悪化時以外の日常の健康維持診療も、地域にかかりつけ医が見つからないために、遠方の高次機能病院や療育病院への通院を余儀なくされている。これらの状況を改善するためには、地域診療所と地域中核病院が連携して福祉支援医療を推進することが必要不可欠であると考える。当院は地域中核病院として、高次機能病院において亜急性期に至った症例を受け入れ在宅移行準備を実施している。在宅移行後の地域主治医と共同で症例の移行準備を進め、症例を取り巻く地域内の診療関連者が共通の認識と方針を形成する様にしている。その結果、地域内において多業種間の連携も可能となり、安定的で包括的な支援システムが構築される。また近隣の地域診療所との連携を構築することで、在宅での急変時の状況を早期に把握し治療を開始することができ、結果として重症化を防ぎ、高次機能病院や地域中核病院への入院の頻度を減らすことができる。さらに、日常の医療的ケアが地域診療所で実施可能となり、今までは遠方の高次機能病院や療育病院に定期的な通院を余儀なくされていた患者や患者家族の負担が軽減される。当院での取り組み、地域診療機関との連携の具体的症例を報告する。