抄録
はじめに
埼玉医科大学は重症心身障害児施設光の家療育センターを同じ敷地内に持つ埼玉県唯一の医師養成機関である。少子高齢化が進んだ我が国においては、他職種が連携して患者中心の医療・福祉サービスを提供することが求められており、教育理念の優れた実地臨床医家の育成のためには、医学的な知識・技術を身に付けるだけでなく、患者を尊重できること、相手の立場に立って物事を考えることができるようにすることが必須である。そこで、2007年度より光の家において医学部1、2年生全員が、障害児者とコミュニケーションをとり、患者の望むケアについて考えることを目的とした実習を、4年生では希望学生が埼玉県立大学のIPE(専門職連携教育)を、5年生では臨床実習を行ってきた。これらが、医学生、卒業生に与えた影響について明らかにする。
方法
2008年度〜2013年度医学部1年生、2年生の実習前後の学生のアンケート調査と1、2、4年生の実習発表会の内容、実習後のレポート、卒後地域研修の動向について分析した。
結果
医学生は、障害があっても自分らしく生きること、その可能性を信じ支えることの重要性を理解した。利用者と関わる中で、笑顔をもらったり、癒やされる、うれしい気持ちになるという経験をし、ケアすることによってケアされていることを理解した学生も多く見られた。4年生のIPE実習でも、チーム形成や自己を含む他職種の専門性を理解することに対して積極的に参加し、退院その後の生活まで含めて患者であるといった理解に到達した。2012、2013年度には、卒後地域医療研修として、光の家を選択する研修医が増加した。
結論
医学部学生が入学早期から重症心身障害児施設で実習することで、相手を人として尊重し患者と寄り添って生活人生を支えることの重要性を理解する医師が育成され、重症心身障害児施設が、将来の医師を育成するために重要な意味を持つ可能性が示唆された。