抄録
はじめに
重症児者に根治的でない外科的介入を早期に積極的に勧めることについて医療者が判断に迷うことは多い。その指針として緩和ケアの考えを根拠にした例を報告する。
症例1
在宅移行目的で他県NICUから当院に転院、原病が脊髄髄膜瘤・水頭症で単純気管切開・人工呼吸器装着・経管栄養の1歳男児。重度膀胱直腸障害を合併し、高圧膀胱と尿路感染症を繰り返すため医療的に導尿が必須だった。緩和ケア的見地から医療者は膀胱皮膚瘻を強く勧め施行。その後順調に在宅移行し発達も伸びている。
症例2
嚥下障害の進行により誤嚥性肺炎を繰り返すアテトーゼ優位の12歳脳性麻痺。今回は重症誤嚥性肺炎治療のため呼吸管理を要した。胃食道逆流症を合併し抜管困難なため、最低十二指腸栄養導入し、それまでむせ込みながらも全経口摂取だったのをあきらめる必要があった。両親は食べることが児の最大の楽しみと認識していた。医療者は緩和ケア的見地から一期的に喉頭気管分離術の施行を強く勧めた。入院34日目に施行後、早期に摂食訓練開始。退院後には全経口摂取に回復し食事が児の最大の楽しみである。
考察
重症児に対して絶対適応でも根治的でもない外科的介入を勧めるかの判断はその時期も含めて医療者にとって大変悩まされることである。このような場合、緩和ケア的な考えを意識的に導入することにより、医療者は必要性の判断がしやすくなることがある。小児緩和ケアは決して終末期医療だけを指すことではない。ICPCNによれば「小児緩和ケア」の目的は、「苦痛を和らげることと生命の質(QOL)を向上させること」であり、期間は「診断と同時に始まり、あらゆる根治的治療とも並行しながら、すべての病期に」わたる。その意味ではこのような外科的介入も緩和ケアの一部と考えることができる。
結語
児のQOL向上を最優先して考えることにより、根治的でない外科的介入の時期を逸することなく早期より考慮しやすくなる。