抄録
目的
重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))のてんかんは難治で経過も長くフェニトイン(PHT)が投与されることが多かった。PHTの長期服用で小脳萎縮、歯肉増殖、骨粗鬆症などの副作用が挙げられPHTの減量中止を行う必要がある。当院でもPHTの減量中止を進めてきたが、PHT減量中止前後の歯肉所見の変化を検討したので報告する。
方法
対象は当院重症児(者)病棟入院中でPHT内服例27人(男17)。年齢は27〜61歳(中央値 46)。PHT開始年齢3〜48歳(中央値14)、内服期間6〜41年(中央値 25)、内服量25〜250mg(中央値 180)。発作コントロールの良否に関わらずPHTの減量中止を行い、27人中中止23人、減量中3人、発作悪化のため減量中止が1人。減量前と2年7カ月の間隔にて歯科医師、歯科衛生士が歯肉所見を評価した。評価項目は歯肉肥大(Harris&Ewalt)とCPITN(歯周疾患治療必要度指数)で、前者はブロックごと、後者はindex toothごとにステージおよびスコアを評価した。症例ごとに前後の変化をA:すべて改善、B:一部改善、C:一部改善・一部悪化、D:不変、E:一部悪化、F:すべて悪化、G:判定不能に分類した。
成績
歯肉肥大の変化は、A:3人、B:11人、C:3人、D:4人E:6人に区分され。CPITNの変化は、A:1人、B:16人、C:4人、D:1人、E:1人、G:4人であった。歯肉肥大とCPITN所見がともにAあるいはBに区分された症例は10人で、ともにEもしくはFの症例はいなかった。
結論
PHTによる歯肉増殖変化は不可逆的といわれ、結果で示された歯肉所見の改善がPHT中止の効果がどうかは断定できない。しかし、口腔衛生は重症児(者)の健康管理において重要で、悪化要因は可能なかぎり取り除くことが必要であり、PHTの中止、他剤への置換を積極的に行うべきである。