抄録
はじめに
知的障害児(者)における異物誤飲は異物の種類が多種多様で、本人の訴えが不明確であることが多く、診断が遅れ重症化することがある。今回、14番環状染色体をもつ児において2カ月間食道に異物が滞留しており、内視鏡的除去術に至った例を経験したため報告する。
症例
症例は15歳女児。出生時より特異顔貌、乳児期より発達の遅れを認めていた。1歳時にてんかんを発症し、染色体検査にて14番環状染色体と診断された。2歳で独歩獲得するも、10歳頃から食欲低下、体重減少に伴い活動量が減り、介助歩行となった。有意語は未獲得である。14歳頃から嚥下障害を認め、誤嚥性肺炎を繰り返すようになり、15歳4カ月時、経管栄養を導入し経口摂取を中止した。退院直後より、頻脈と注入後の発汗がみられるようになり、てんかん発作が頻回となった。同時期から前頸部の腫脹もみられ、甲状腺機能亢進症が疑われるも甲状腺機能は正常であり、精査加療目的に15歳6カ月時当科入院となった。前頸部正中左側に腫脹、頻脈と注入後の発汗を認めた。血液検査で異常所見はみられなかった。頸部CTを施行したところ、食道内に径1.5cm、長さ6cm程度、内腔のある筒状の異物を認めた。内視鏡的に除去を行ったところ、同日より頻脈や発汗は改善した。除去された食道異物はらせん状のゴムでできた箸の矯正に用いる器具で、児が時折使用していた。除去時異物が接していた食道に潰瘍を形成していたが、1週間後には軽快していた。
結語
2カ月間食道に異物が滞留していたが、異物に内腔があり通過性は保たれていた。しかし食道に潰瘍が形成されており食道穿孔のリスクがあった。知的障害児(者)の場合には本人の訴えが不明確であり、本症例のような原因不明の頻脈・発汗などの自律神経症状の診察時にも、異物誤飲を鑑別の一つとして考えておくことが必要である。