抄録
はじめに
近年経皮内視鏡的胃瘻造設術が普及したことで胃瘻の造設が簡便になり、一般化してきている。それに伴い、経鼻経管栄養ではカテーテルがつまりやすく、注入することが難しかったミキサー食を取り入れるケースが増えている。今回、長期完全経管栄養後、ミキサー食注入の導入に伴いアナフィラキシー反応を起こした一例を経験したため報告する。
症例
19歳女性。周生期低酸素性脳症後遺症。超重症児スコア29点。気管支喘息を合併している。生後経口摂食と経管栄養を併用していたが、誤嚥性肺炎を繰り返したため5歳より完全経管栄養となる。17歳時に胃管挿入困難、胃食道逆流のため胃瘻造設・噴門再形成術を施行。以後、トラブルもなく、栄養剤による経管栄養は順調に行えていた。2013年7月に自宅で母親が作ったミキサー食を注入後60分で発熱・顔面紅潮・喘鳴・嘔気出現、SpO2 76%まで低下するエピソードあり。主治医病院に電話で状況を説明したが、様子を見るように言われたため当日は経過を観察した。翌日、当院受診時には前日より呼吸状態改善も、依然喘息発作重積状態であった。食物アレルギーの検査を行ったところ山芋3+であった。ミキサー食中の山芋による食事アレルギー‐アナフィラキシー反応と診断された。
考案
今回のケースでは経口摂食していたときに食事性のアレルゲンによる感作が確立しており、胃瘻造設を機に山芋入りのミキサー食を注入したことでアナフィラキシー反応が起こったと考えられる。ミキサー食の注入には、微量元素の摂取、注入時間の短縮、家族の食事と同じものを注入することが可能である等、栄養剤の注入では得られないメリットが多くある。しかし過去に経口摂食しており、その後完全経管栄養へ移行した例でミキサー食を開始する場合、特に他にアレルギー疾患を合併している場合には食事アレルギーのチェックを行う等の注意が必要であると考えられた。