抄録
目的
重症心身障害児(以下、重障児)の心身機能の維持・向上において日々の関わりが重要な意義を持つ。本研究では、共同生活者の関わり意識を重障児の機能活用の視点から向上させ得る簡便な自己評価シートの開発を試み、重障児病棟での実施効果について検討した。
方法
1.自己評価シート:「聴く」「視る」「触れて感じる」「考え・発信する」の4カテゴリ、計17項目からなる自己評価シートを作成した。項目はすべて、自己評価シートの実施者側ではなく受け手側となる重障児の視点で記載されていた。評価は4段階で行った。また、項目以外の独自の関わりを評価する欄が設定されていた。201X年10月−201X+1年2月の間に国立病院機構A病院の重障児病棟で勤務していたスタッフ(看護師、指導員、保育士、療養介護員)55名を対象とし、期間中に6回実施した。
2.病棟の刺激環境調査:201X年11月および201X+1年11−12月に、病棟で生活する重障児3例(事例A、B、C、いずれも大島の分類1に該当)のベッドサイドの人関連刺激を調査した。40分間のVTR記録を朝、昼、夕方の時間帯に複数回実施し、接近(視覚)、声掛け(聴覚)、触れる(触覚)の出現頻度を求めた。
結果
1.自己評価シート:6回すべてに回答した32名の評価点合計について、回数の主効果が有意となった(F(1,155)=2.38、p<.05)。「視る」「考え・発信する」については、第1回では複数項目で平均評価点が2点を下回ったが、3回目では全項目が2点以上となった。「聴く」「触れて感じる」については、独自の関わりとして遊びが増加した。
2.病室の刺激環境調査:様々な日課が行われる朝の時間帯において、2013年の人関連刺激は平均5.8回、2014年は平均13.2回であった。
結論
自己評価シートの実施によって、個々のスタッフの関わり意識が向上し、生活場面に反映されたと思われた。