日本重症心身障害学会誌
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O-1-D14 看護師が気管カニューレを交換している気管軟化症の幼児例
武市 知己秋山 朋江
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2016 年 41 巻 2 号 p. 237

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抄録
はじめに 平成27年10月から「特定行為に係る看護師の研修制度(以下、本制度)」が始まり、「気管カニューレ(以下、カニューレ)の交換」は特定行為と認定され、看護師が特定行為研修と医師手順書により特定の患者に対して自律的判断で特定行為を実施することが可能になった。同時に、特定行為研修を経ずとも医師の指示下であれば特定行為に相当する診療の補助を行うことが可能であると明文化され、これまで曖昧であった看護師によるカニューレ交換は一定条件下に違法性が棄却された。当病棟では、気管軟化症の幼児例でカニューレ事故抜管の緊急時に備えて看護師がカニューレの定期交換を行っているので報告する。 症例 ベックウィズ・ウイーデマン症候群の3歳女児(大島分類4)。気管軟化症に対して単純気管切開・カニューレ管理中で、気管軟化症を併発していた。3歳のとき(平成26年5月)事故抜管があり急性呼吸困難に陥ったが、看護師のみでは対応できず医師到着後にカニューレを再挿入され改善した。当院医療安全管理委員会の承認と保護者の同意を得て、看護師に対して勉強会を開催した後、看護師に対してカニューレ交換の実地指導を開始した。現在月1〜2回のカニューレ定期交換を医師指導下に看護師が継続して行っている。 考察 カニューレ事故抜管の緊急時に、特定行為研修を受けた看護師がいるとはかぎらず、また医師の指示がすみやかに受けられない場合も起こりうる。本制度でも、このような状況下で特定行為研修を受けていない一般看護師が自律的に特定行為を行うことの是非までは、明確に示されていない。しかし当病棟では、カニューレ交換手技を重症心身障害児(者)の生命を守るために必要な技術として、今後も看護師に指導していく予定である。一方で、看護師に過剰な負担がかからないように、その指導対象となる症例は慎重に選択する必要があると考えている。
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